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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > とことん善人な江口洋介が“アレ”

『はじめまして、愛しています。』とことん善人な江口洋介が“アレ”じゃなきゃいいけど……

hazimemasite0715テレビ朝日系『はじめまして、愛しています。』番組サイトより

『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で最終回40%という、とんでもない視聴率を叩き出したと思ったら、『純と愛』(NHK)、『○○妻』『偽装の夫婦』(ともに日本テレビ系)ではトンデモ展開で視聴者を混乱の極みに陥れた脚本家・遊川和彦の最新作『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)がスタートしました。初回視聴率は10.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まあまあな感じ。初回10%が「まあまあ」と感じるあたり、昨今のドラマ離れを実感するところです。

 主人公は、底抜けに明るい不動産営業マン・梅田信次(江口洋介)と、自宅でピアノ教室を営む妻・美奈(尾野真千子)。「美奈がプロのピアニストを目指しているから」という理由で、2人に子どもはありませんでしたが、互いを「信ちゃん」「美奈ちゃん」と呼び合う仲良し夫婦。

 そんな夫婦宅の庭に、忽然と現れた知らない子どもに運命を感じた2人が、その子と特別養子縁組しようとする物語です。

 特別養子縁組というのは、実子として戸籍に入り、養親からの離縁はできない制度で、6カ月以上の試験養育期間を経て裁判所の審判によって成立するもの。簡単にいえば、気持ち的な問題だけでなく法律上でも「よその子と本当の家族になる」ということですね。

 美奈ちゃんは、ピアニストとしてまったく優秀ではありません。10代から受け始めたコンテストは、35歳になる現在まで49連敗中。父親が大物コンダクターなので、たまにオーケストラで弾く仕事を請けても「親の七光りだろ」という視線に苦しむだけ。さらに、ピアノ教室を開いているのに子どもとのコミュニケーションも苦手です。

 一方、信ちゃんは「コミュニケーションお化け」です。困っている人がいれば助けてあげずにはいられないし、余計な世話を焼いて迷惑を被ることもしばしば。町中の人はだいたい知り合いという感じです。

 そうした人物像が実に手際よく紹介されていて、さすがベテラン脚本家。すんなりとキャラクターが入ってきました。

 そして、いきなり姿を現した孤児(横山歩)が、全然かわいくない。これが、ドラマ的にすごく正しい感じがしました。2人が孤児を養子にする理由から、「かわいいから」が、まず排除されるんですね。この子が「別にかわいくない」からこそ、「養子にする」という決断に相応の理由が必要になる。

 その理由を、信ちゃんは「運命」だと言い張ります。なぜだかわからないけれど、この子は2度も自宅の庭に現れた。だから「運命」を感じるのだと。当然、美奈ちゃんは渋りまくりです。

 フィクションの世界で、説得力をもって「運命」を描くのは、実に難しいことです。そもそもドラマというのは全部ウソですから、主人公が「運命」だと言った瞬間に、それはドラマの都合で「運命」になってしまう。けれど、それでは視聴者は納得しない。この「運命」が「運命」であることを形をもって納得させるのが、ウソの中で本当を見せる脚本家の仕事になるわけです。

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