反日思想とも自虐史観とも異なる歴史サスペンス!“猟奇的な花嫁”チョン・ジヒョン主演作『暗殺』
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えげつない男ソクチンを裏の主人公に据えることで、チェ・ドンフン監督は本作が薄っぺらい反日映画に陥ることを防ぎ、韓民族にとって苦味のあるリアルな歴史ドラマに仕立てている。ソクチンもまた単なる悪役ではない。先行きの見えない時流の中で、常に神経を張り巡らして強いほうに付くことでサバイブしてきた。民族独立という理想のために身を捧げるオギュン、冒険と恋に生きるロマンチストのハワイ・ピストルとも異なる、徹底したリアリストなのだ。『イルマーレ』(01)など実直な青年のイメージが強かったイ・ジョンジュがこの難役に挑んでいる。「まさか韓国が独立する日がくるとは思わなかった」と彼が最期に漏らす台詞が印象的だ。
本作に登場する人物は日本兵も含めて、すべて韓国人キャストが演じており、従って日本兵は奇妙ななんちゃって日本語を話す。このことに違和感を覚える人もいると思うが、これもドンフン監督の演出だと考えたい。本作は日本人を悪者として描くことを主眼としておらず、あくまでも韓民族内部の問題として日帝時代を振り返りたかったのではないだろうか。チョン・ジヒョン、ハ・ジョンウたちがノースタントで挑んだド迫力のアクション映画としても充分に面白いが、善悪の二元論に収まらない歴史ドラマとしてもずしりとした重みを感じさせる。
(文=長野辰次)
『暗殺』
監督・脚本/チェ・ドンフン 出演/チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ、オ・ダルス、チョ・ジヌン、チェ・ドクムン、イ・ギョンヨン、チョ・スンウ、キム・ヘスク、パク・ビョンウン、キム・ウィソン、イ・ヨンソク
配給/ハーク 7月16日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー (c)2015 SHOWBOX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.ansatsu.info
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