PVが2年で5倍! 東洋経済オンライン編集長の手腕とは?
──芸能系の媒体とは一線を画す切り口ですね。
山田 この記事に限らず、うちで配信する場合、必ず「経済メディアが取り上げる意味」が問われます。テーマこそ、経済、政治、キャリアと幅広いですが、どんな記事でも数字をしっかりと拾い、根拠を示すことを心がけることで、信頼性の高い骨太の記事になるんです。
また、7月からは、サヘル・ローズさんをキャラクターに「硬派な記事、もっと読もう!」という広告キャンペーン(http://toyokeizai.net/sp/160711sahel_lp/)を行います。ロイターによれば、日本のWebではエンタメ、芸能、スポーツなどの軟派な記事が多く読まれる傾向にあり、うちが配信するような政治・国際・ビジネスといったカテゴリは他の国々に比較して読まれにくい。このキャンペーンで、日本のWebの現状を少しでも変えられればと思います。
──アクセスランキングを見ると、貧困系の話が上位に来ることも多くなっています。東洋経済オンラインのターゲットであるビジネスパーソンがこのような記事を読んでいるのは意外でした。
山田 もともと『週刊東洋経済』では、3カ月に一度程度雇用問題や格差問題を取り扱っていました。昨年、週刊誌のプロモーションのために『「中年フリーター」のあまりにも残酷な現実』(http://toyokeizai.net/articles/-/87614)という記事を転載したところ、とても長く読まれる記事になったんです。今は、貧困についてノンフィクションライターの中村淳彦さんによる「女性の貧困」、ジャーナリストの藤田和恵さんによる「貧困社会」、そしてルポライターの鈴木大介さんによる「貧困報道」についての3つの連載が動いています。もちろん、数字が取れるというメリットも有りますが、00年代から格差は拡大し続けているにもかかわらず、ビジネスエリートが目を背けることで、雇用問題は一向に改善せず社会が分断されたまま。そんな分断を乗り越えるために、ビジネスパーソンの目に触れるようにしたいと考えているんです。
──「報道機関としての責任」という面もあるんですね。
山田 貧困の特集自体は、他の媒体でも取り上げられます。しかし、東洋経済オンラインらしく、ビジネスパーソンにむけて奨学金や給与などのリアルな数字を出すことで、他媒体とは異なったテイストにこだわっているんです。今後、ユーザーが広がっていく中で、記事の中にさまざまなバリエーションを持つことは一つの課題ですね。
──東洋経済オンラインにとってライバルとなる媒体はどこなのでしょうか?
山田 やはり日本経済新聞のインターネット版は意識するメディアです。彼らは、1日900本あまりの配信しており、効率ではなく汎用性を重視している。日経が汎用性を意識しているからこそ、東洋経済オンラインでは狭くても深い記事に特化できるんです。他に、ニュースサイトとしては、アメリカのビジネスインサイダー(http://www.businessinsider.com/)、UIの部分ではYahoo!やAmazonのインターフェイスには常に注目しています。
──最後に、山田さん自身としては、今後インターネットの未来はどうなっていくと考えていますか?
山田 10年後には紙のメディアはビジネスとして成り立たなくなるかもしれません。紙の新聞を読んだことのない人々が30代となり、書籍も高級化していくでしょう。「情報を得る」という目的は、Webに集約されていくと思います。その時には、今は紙媒体で活躍してるジャーナリストや記者もWebの世界に入ってきて、ますますWebが多様なものになっていくはず。また、人が集まることによって、お金を稼ぐ道も増えていきます。インターネットの未来に対して悲観的な意見をする人も少なくありませんが、お金、人ともにさらに集まってくれば、より晴れやかな世界になると思いますよ。
──ありがとうございました!
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