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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.381

“奇跡の男”と呼ばれた人気アスリートの裏の顔! ドーピングで夢をつかんだ『疑惑のチャンピオン』

movie-champion03スポーツ医師のフェラーリ(ギヨーム・カネ)はドーピングを悪とは考えず、人間の潜在能力を引き出す最新科学だと考えていた。

 ドーピングをしても、ツールドフランスが過酷なレースであることに変わりはない。それでもアームストロングは7連覇を成し遂げ、有終の美を飾る。だが、落とし穴は意外なところで待っていた。ドーピング疑惑を振り切って、悠々自適のセレブ生活を送っていたアームストロングだが、平穏な暮らしは長くは続かなかった。ドラッグ中毒者が薬物を手放せないように、彼も肉体と精神をギリギリの限界まで追い込んだ末に感じるレースでの高揚感が忘れられず、4年ぶりにツールドフランスへ復帰する。このときのツールドフランスはドーピング検査が厳しくなっており、38歳になったアームストロングはドーピングなしで3位入賞を果たしたと言われている。彼のアスリートとしてのポテンシャルが尋常ではなく高かったことが分かる。だが、現役復帰がきっかけで、過去のドーピング歴が発覚。すでにツールドフランスの主演スターではなくなっていたアームストロングは、過去の勝利をすべて剥奪され、永久追放の身となる。ちなみにアームストロングが達成した7連覇の期間は、繰り上げでの優勝者は認定されていない。それは上位者がすべてドーピングに関わっていたからだ。

 アームストロングには大事にしている家訓がある。17歳のときに彼を産んだ母リンダが伝えた「すべての障害はチャンスだと思いなさい」という言葉だ。アームストロングはこの言葉を支えに癌治療に耐え、ツールドフランスに復帰を果たした。40歳を過ぎた今もハードなトレーニングを自分に課し、近年人気が高まりつつあるトレイルランニングで好タイムを残している。彼はロードレース界から追放された悲劇のチャンピオンではない。薬物まみれのプロスポーツ界に君臨する生きた伝説のチャンピオンなのだ。
(文=長野辰次)

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『疑惑のチャンピオン』
原案/デイヴィッド・ウォルシュ  脚本/ジョン・ホッジ 監督/スティーヴン・フリアーズ 出演/ベン・フォスター、クリス・オダウド、ギヨーム・カネ、ジェシー・プレモンス、リー・ペイス、ドゥニ・メノーシュ、エドワード・ホッグ、ダスティン・ホフマン、エイレン・キャシデイ 
配給/ロングタイド 7月2日(土)より丸の内ピカデリー&新宿ピカデリーほか全国公開
(c)2015 STUDIOCANAL S.A.ALL RIGHTS RESERVED.
http://movie-champion.com

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