“奇跡の男”と呼ばれた人気アスリートの裏の顔! ドーピングで夢をつかんだ『疑惑のチャンピオン』
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アームストロングのことをツールドフランス参戦時から見守ってきたスポーツジャーナリストのデイヴィッド(クリス・オダウド)が、彼の変身ぶりに違和感を覚える。以前は山岳ステージを苦手にしていたアームストロングが、闘病からの復帰後は楽々と攻略するようになった。多くのメディアが難病を克服したアームストロングを英雄と讃える中、旧知のデイヴィッドはドーピング疑惑を唱える。記者会見の場でアームストロングとデイヴィッドは熾烈な火花を散らす。記者席にいたデイヴィッドに対し、チャンピオンであるアームストロングは「僕はレースの収益金を癌で苦しんでいる人たちのために使い、多くの子どもたちに希望も与えている。でも、あいつは自分が書いた暴露本を売りたいだけなんだ」と口撃する。ツールドフランスの運営サイドも他のメディアの記者たちも、みんなアームストロングの味方だった。絶大な人気を誇り、多くのスポンサーを抱えるアームストロングなしでは、この競技は成り立たないことを知っていたからだ。
『疑惑のチャンピオン』を観ていると、デヴィッド・フィンチャー製作総指揮の連続ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の主人公フランク(ケヴィン・スペイシー)とイメージが重なってくる。全米で大人気のこのドラマは、米国の下院議員だったフランクが謀略の限りを尽くして、ライバルたちを次々と蹴落とし、野心を叶えるために殺人にさえも手を染めるという悪漢ストーリーだ。だが、冷血極まりないフランク議員は、第2シーズンでは副大統領に、さらに第3シーズンでは大統領と、より強大な権力を手に入れることで、国民の雇用問題や世界平和を熱心に考える善人としての顔がどんどん前面に出てくるようになる。自分が本当にやりたいことをやるには、力を持たなくてはならない。無力な人間が善行を唱えても、誰も耳を傾けないというこの世の真理を合衆国大統領フランクは教えてくれる。現実の世界に生きるアームストロングもそのことを熟知していた。ままならない人生を切り開くためなら、手段を選んではいられないのだと。
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