42歳非モテ男と、18歳フィリピーナの壮絶すぎる国際結婚物語『愛しのアイリーン』
#マンガ #コミック #ザオリク的マンガ読み
さて、ここまでのシーンで6話経過しているのですが、一切タイトルの「アイリーン」がなんなのか触れられていません。まるでスピッツの「ロビンソン」並みに謎の存在でしたが、ここから急展開します。
愛子に振られて失意の岩男は、あっせん業者になけなしの貯金280万円を支払って、フィリピンへ嫁探しに。そして、30人の嫁候補と面談の末、面倒くさくなって決めたのが、18歳の生娘、アイリーンでした。ただヤリたいだけの夫と、カネ目当ての妻。打算だらけの国際結婚が成立します。
しかし、せっかく嫁を連れて帰国した岩男、バラ色のハネムーンどころか、そこからが地獄の始まりでした。岩男が黙ってフィリピンに嫁探しに行っている間に父が亡くなっていたのです。事もあろうに、葬儀中にフィリピン人妻を突然連れて帰ってきたため、母・ツルが激怒。その姿は、まさに鬼婆そのものでした。その後のシーンでは、ツルはアイリーンに猟銃を突きつけ、単なる脅しかと思いきや、本当に発砲。間一髪で逃れたものの、本気でアイリーンを殺しにかかるシーンが何度かあります。こんな恐ろしい婆さん、マンガでもなかなかいないレベルです。
家の敷居をまたげなくなってしまった岩男は、アイリーンとともにラブホテルを転々とする生活を余儀なくされますが、しょせんカネで買った関係。アイリーンが岩男に心を許さず、セックスを拒み続けるため、いまだに初夜を迎えられません。280万円払っても望みがかなわない岩男は、ラブホのベッドを引き裂き、逃げ回るアイリーンに対し「おまんごー」「メイグラーブ!!」「ファッグ ミ ファッグ ミ」と怒りの絶叫。最後は、ホテルの部屋中の器物を破壊しまくります。非モテが極まって、公害レベルの迷惑な存在へと進化!
ここまででも十分に常軌を逸している展開なのですが、その後もすごいです。どうしても岩男とアイリーンの結婚を受け入れられないツルは、アイリーンと和解するフリをして家に呼び寄せ、女衒のヤクザ者に売り飛ばします。しかし、ヤクザに車で連れ去られるアイリーンを岩男がカーチェイスの末、決死の救出。勢い余って、ヤクザ者を猟銃で撃ち殺してしまいます。
岩男とアイリーンは、その遺体を人里離れた山中に埋めます。皮肉なことに、結婚後初めての共同作業がケーキカットではなく、死体埋葬でした。そしてその夜、2人は初めて結ばれるのです。
その後、2人は仲睦まじく幸せに……ということは全然なく、人を殺した罪悪感と、殺したヤクザの仲間からの執拗な嫌がらせにより精神崩壊状態の岩男は、同僚の愛子を襲ったり、アイリーンの友人のフィリピーナを買ったりと、女がいれば手当たり次第にセックス三昧で現実逃避に走ります。人を殺した後が一番モテモテ、なんという皮肉でしょうか。
その後はなんと、岩男が途中で死亡。残されたアイリーンとツルが壮絶な嫁姑バトルを展開しますが、最後の最後までドン底すぎる展開が続きます。
実は本作品、農村の少子高齢化や嫁不足問題、後継者問題、そして国際結婚といった複雑な社会問題をテーマとして扱っている作品でもあるのですが、終始狂気に満ちあふれた、気が抜けないストーリーとすさまじい画で、そういった部分をまったく感じさせません。バブルアフターで浮かれ気分の残る世間の風潮に強烈な冷水を浴びせるものすごいマンガ、それが『愛しのアイリーン』だったのです。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)
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