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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 辺境作家が追った“納豆”の謎

日本人だけのソウルフードではなかった!? 辺境作家・高野秀行が追った納豆ルポ『謎のアジア納豆』

 納豆。それは、日本人だけが食べる超庶民派ソウルフード、のはずであった。ところが、実はミャンマーやタイ、ネパール、中国、ブータン、ラオスでも、古くから食べられていた――!

 そんな世界を股にかけた衝撃の納豆ルポ『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』(新潮社)が発売された。著者は、辺境作家のレジェンド・高野秀行氏。早稲田大学在学中の『幻獣ムベンベを追え』(PHP研究所)でデビューした彼も、まもなく50歳を迎える。にもかかわらず、まったくといっていいほどその好奇心と行動力は衰えず、まさに生きる伝説である。これまでに、コンゴ奥地の幻獣ムベンベ探し、ゴールデン・トライアングルでアヘンを栽培する村に潜入、無政府状態のソマリア国内に存在する独立国家ソマリランドを取材したりと、好奇心の赴くまま、奥へ奥へと突き進み、取材を繰り返してきた。

 その高野氏が、次に目をつけたのが納豆だ。出合いは、ミャンマー北部カチン州のジャングルを歩いていたとき。密林が途切れた平原にある小さな村で、ふいに白いご飯に生卵と納豆が添えられた食事が目の前に現れた。しょうゆではなく、塩で食べたというが、ちゃんと糸も引くし、味は間違いなく日本の納豆と同じだったという。さらに、タイ北部の町・チェンマイにある、当時「麻薬王」と呼ばれていたクンサーの地下宝石工場でも“納豆汁”に出くわす。納豆は厚さ2~3ミリの薄っぺらい円盤状をしていて、薄焼きせんべいのようなものを火であぶり、杵(きね)でついて粉にし、スープにしたのだという。

 高野氏は、辺境での納豆との出合いから、日本人が外国人に対し、踏み絵のごとく「納豆は食べられるのか?」と問う場面に出くわすと、ついつい口を挟んでしまう。納豆は日本人だけの専売特許ではない! と。けれど、返ってくる答えはいつも同じだ。それは「日本の納豆と同じなのか?」「作り方は?」。そこで、答えに窮していた高野氏が、アジア納豆、さらには、そもそも日本の納豆とはなんぞや、という調査に本格的に乗り出す。その答えとして、季刊誌「考える人」(新潮社)で発表。大幅に加筆して導き出した報告書が、本書だ。

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