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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 恐怖と暴力『クリーピー 偽りの隣人』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.378

北九州監禁殺人事件、尼崎変死事件に似ている!! 恐怖と暴力による洗脳『クリーピー 偽りの隣人』

creepy03日野市で起きた一家失踪事件で生き残った早紀(川口春奈)。高倉や刑事の野上は、早紀の心情を考えずに当時の状況を執拗に聞き出す。

 本作でヤバいのは、犯人だけではない。奇妙な事件を追うことに熱中するあまり、犯罪心理学者の高倉も刑事の野上も自分の足もとや背後で起きていることにはまるで気づかずにいる。高倉と野上も犯罪者の暗黒面にどうしようもなく惹かれてしまうという心の闇を抱えている。犯人から見れば、スキだらけの人間なのだ。凶悪犯罪とは無関係のまっとうな人間もその家族も、ほんのちょっとウィークポイントを突くだけで、ドミノ式にあっけなく崩れ落ちてしまう。

 黒沢監督から興味深い話を聞いた。ベルリン映画祭や香港映画祭でプレミア上映された際、引っ越したばかり康子たちが近所にお菓子を持って挨拶回りするシーンが海外の人たちには奇異に感じられたらしい。引っ越しの挨拶回りは日本独自の習慣らしく、海外では面識のない家々を一軒ずつ訪ねて回ることはしないそうだ。挨拶を交わしただけで、隣人のことを知った気になって安心してしまう。こういう状況がいちばん心のスキを生みやすいんでしょう。黒沢監督は澄ました顔で、何気に恐ろしいことを口にする。近所づきあいがとても曖昧な日本の都市部は、犯罪者にとって格好の狩猟場に映るらしい。
(文=長野辰次)

creepy04

『クリーピー 偽りの隣人』
原作/前川裕 脚本/黒沢清、池田千尋 監督/黒沢清
出演/西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之、藤野涼子、戸田昌宏、馬場徹、最所美咲、池田道枝、佐藤直子、笹野高史 
配給/松竹 6月18日(土)より全国ロードショー
(c)2016「クリーピー」製作委員会
http://creepy.asmik-ace.co.jp

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