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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 森達也監督『FAKE』インタビュー
『FAKE』公開記念ロングインタビュー

二極化する世界への違和感──『FAKE』森達也が“ゴーストライター”佐村河内守を撮ったワケ

fake_main(c)2016「Fake」製作委員会

■僕の手のひらの上で勝手にやってね

――「誰にも言わないでください、衝撃のラスト12分間」というキャッチコピーがつけられているので、よっぽどのことがあるのかと試写会で身構えてしまったんですが、僕個人としては、別に言ってもいいんじゃないかなと思ったんですが……。

 編集が終わって、宣伝についての打ち合わせの段階で、「ホラーかサスペンス映画で、こういうフレーズがあったよね」ということでつけただけのキャッチコピーなんです……。どうせ(試写を見た)誰かが言っちゃうだろうと思っていたけれど、今のところは誰も言ってないですね。まあ約束うんぬんのレベルではなくて、知らずに見たほうがいいかなと自制してくれたような気がします。それは、とてもありがたいです。

――『FAKE』というタイトルも相まって、サブカル界隈の著名人たちがいろいろと深読みをしていますが、このタイトルには、どういう意味があるんでしょうか?

 深い意味はないです。最近、誰かに言われて気づいたのだけど、僕の映画って今回だけでなく、『A』『A2』『311』と、全部アルファベットと数字しか使ってない。意識のどこかで「意味を出したくない」というのがあるんだと思います。普通、タイトルって、映画全体の意味を凝縮させるわけでしょ? でも「凝縮しちゃダメだろ」と常々思っていて。本来もっと多面的なのに、なんで凝縮しちゃうんだと。今のメディアに対する違和感と同じですね。だから本当はタイトルなしが一番いいんですけど、さすがにタイトルがないと興行できないから、とりあえず『FAKE』と。それも相まってなのか、多くの人が深読みしすぎて、「あそこがフェイクじゃないか」「外国人記者がフェイクだ」「奥さんがニセモノなんじゃないか」とか、いろいろ言われていますけれど……。

――町山智浩さんが『オーソン・ウェルズのフェイク』との関連性を指摘していましたが、そんなことは……?

 その映画、見たことないです。

――ああー! みんな考えすぎですね。

 チラシに「視点や解釈は無数です」と書きましたけど、ちゃんと作品で誘導しているつもりですから、本気で自由に解釈してほしいと思って書いているわけじゃないです。「自由に解釈してもいいけど、僕の手のひらの上で勝手にやってね」というレベルです。まあ深読みする人がいたら、それはそれでいいかなとも思いますが。映像って、そういうものですから。最初に活字じゃなく、映像にしようと思ったのは。そういう想像を広げる余白がいっぱいある素材だなって思ったからです。

――それでは、次に撮りたいと思っている題材は?

 ……これもよく聞かれるけど、今は何も考えられないですね。さっきも言ったように、表現は必ず人を傷つけます。『A2』から15年間も新作を撮れなかった理由のひとつは、『A』と『A2』でたくさんの人を傷つけたという自覚があるからです。HPがほぼゼロになってしまった。今もまた、新作を撮り終えてほぼゼロになっちゃってるんで、ある程度時間がたって、また人を傷つける覚悟ができたら、次の題材を考える余裕が出てくるんだと思います。
(取材・文=北村ヂン)

●『FAKE』
監督・撮影:森達也 主演:佐村河内守 プロデューサー:橋本佳子 撮影:山崎裕 編集:鈴尾啓太 制作:ドキュメンタリージャパン 製作:「Fake」製作委員会 配給:東風 
6月4日(土)よりユーロスペースにてロードショー、ほか全国順次公開
http://www.fakemovie.jp/

●同時公開『A2』完全版
森達也監督15年ぶりの新作『FAKE』公開に合わせ、2002年の劇場公開時カットされた幻のシーンを加えた完全版を、ユーロスペースにて上映。
6/18(土)~24(金)21:00
7/9(土)~15(金)21:00

最終更新:2016/06/01 15:30
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