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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 日常生活との交差点『団地』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.376

叶わなかった未来と愛すべき日常生活との交差点。 阪本順治監督×藤山直美の奇妙なコメディ『団地』

danchi03自治会長の正三(石橋蓮司)たちは引っ越してきてまだ日の浅いヒナ子と清治たち夫婦の噂話で持ち切りだった。

 1962年生まれの是枝監督は、自身の故郷である東京都清瀬市の旭が丘団地でロケ撮影を行ない、哀惜の念を込めてもう戻ることはない家族の姿を描いている。体の大きな阿部寛が団地の浴槽に窮屈そうに浸かるシーンはおかしくて、そして哀しい。一方、関西出身の阪本監督の実家は老舗の仏具店で、お向かいが東映の映画館という商店街で育った。1958年生まれの阪本監督にとって、きっと団地生活は憧れだったに違いない。ちなみに『団地』のロケ地は、栃木県足利市の錦町団地だ。是枝監督は団地生活をリアルかつ愛情を持って描き、阪本監督はファンタジックに捉えている。作風はまるで異なる両作だが、どちらもコミュニティー空間が失われていく切なさが胸に残る。

 子どもの頃に夢見た未来社会は、どこへ消えてしまったのだろうか。どこか遠い星に行けば、あの頃に夢見た理想の世界が待っているのだろうか。近くの団地からひょっこりと顔を出した給水塔を眺めながら、ふとそんなことを考える。
(文=長野辰次)

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『団地』
脚本・監督/阪本順治 出演/藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工、冨浦智嗣、竹内都子、濱田マリ、原田麻由、滝谷可里、宅間孝行、小笠原弘晃、三浦誠己、麿赤兒 配給/キノフィルムズ 6月4日(土)より有楽町スバル座、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
(c)2016「団地」製作委員会
http://danchi-movie.com

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