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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 桂歌丸版『笑点』の“粋”な終い方
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第124回

アナーキーで反骨――桂歌丸版『笑点』の“粋”な終い方

 番組初回から50年もの間、『笑点』(日本テレビ系)に出演し続けた桂歌丸が、司会から勇退した。

 5月22日の放送の「歌丸ラスト大喜利スペシャル」では、歌丸司会最後の大喜利や、新司会者発表ということもあり、大きな注目を浴びた。TOKIOと『笑点』軍団の対決あり、再現ドラマを交えた『笑点』の“ウラ事件簿”ありと、盛りだくさん。

 演芸コーナーではナイツが登場し、いつもの“ヤホー漫才”を「桂歌丸」をテーマにやっているところに、なんと本人が登場。「ナイツ」をテーマに、“ヤホー”ならぬ“アホー漫才”を披露したりもした。

 だが、そんな見どころの多い各コーナーをしのぎ、その真骨頂を見せつけたのは、やはり番組後半に行われた生大喜利である。

 3問行われた大喜利のお題はすべて“粋”。たとえば、2問目はこうだ。

「アタクシは今日で笑点の司会からお別れをするわけですが、『笑点』に涙というのは似合わないと思うんですよね。そこで皆さんね、豪快に笑いながらひと言。アタクシがね、『どうしたの?』と伺いますので、返事を返していただきたい」

『笑点』に涙は似合わない。まさにその通りだ。

 それに対する答えも粋だ。たとえば、歌丸と長年にわたって番組で舌戦を繰り広げてきた三遊亭円楽。

「アーハハハ、ワッハハハ」
「どうしたの?」
「笑ってないと涙が出ちゃうんです」

 そんな答えに、歌丸は座布団を。

「山田くん、そーっと1枚やってください」

 2人の関係性を日本中の人が知っているからこそ胸に響く、この一連の流れの美しさ。50年続く『笑点』は、もはや日本人の日常生活の一部になっている。そこに出る落語家や演芸を見るというよりも、その番組パッケージそのものを見ている。

 たとえば、先日放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)に三遊亭好楽が出演した。「街で『ファンなんです』と声かけてくるファンに限って、たいしたファンじゃない説」を検証するためだ。

 好楽が実際に街頭に立つと、すぐに多くの人たちが声をかけてくる。しかし、声をかけてくる人のほとんどが、好楽の名前を知らない。『笑点』の番組自体のファンだというのだ。

 実際、好楽の名前を知らなくても、席の並び順はわかる。そんな番組、なかなかない。

 大喜利のお題や答えで、政治的な時事をイジることも少なくない。“普通”に見えて、実は“攻めている”。そもそも日曜の夕方にただひたすら大喜利をしていること自体、冷静に考えるとアナーキーだ。

「笑芸人」vol.2(白夜書房)の歌丸インタビューによると、ある時などは、番組スポンサーになりたいという企業がいたにもかかわらず、出演者たちの一存で断ったこともあるという。

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