深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.375
マスコミから袋叩きにされた渦中の男を密着取材!佐村河内氏主演の純愛ドキュメンタリー『FAKE』
2016/05/19 20:00
#映画 #パンドラ映画館
佐村河内氏は聴覚障害があっても曲づくりには問題がないことをカメラの前で証明してみせる。
そしてクライマックスシーンへ。沈黙を続けていた佐村河内氏の逆襲がついに始まる。久しぶりに佐村河内氏のマンションを訪ねた森監督は、そこで思いがけない状況に遭遇する。このシーン、実にドラマチックであり、佐村河内氏主演ドキュメンタリーのラストを飾るのに相応しい感動のエンディングとなっている。だが、エンドロールが流れ終わった最後の最後に、このドキュメンタリー全体をひっくり返してしまう強烈な仕掛けを森監督は用意している。
森監督は「テレビをつくっている人は、出ている人をどう面白くするしかない」と語ったが、映画屋はそうではないとは口にしていない。森監督も佐村河内氏という美味しい素材を使って、どれだけ面白いドキュメンタリー映画をつくるかを考えていたはずだ。ただ、表層的なテレビ番組とは違って、観た人によって様々な解釈が可能な重層的な映像作品を森監督は撮り上げている。ひとつの事象は見方次第によって玉虫のように違った輝きを放つ。『FAKE』は二度三度と見直すことで、その度に違った回答が得られるドキュメンタリーとなっている。
(文=長野辰次)
『FAKE』
監督・撮影/森達也 プロデューサー/橋本佳子 撮影/山崎裕 編集/鈴尾啓太 配給/東風 6月4日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
(c)2016「FAKE」製作委員会
http://www.fakemovie.jp
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