清原被告にぜひ観てほしいドキュメンタリー映画! マイケル・ムーア監督作『世界侵略のススメ』
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アポなし突撃取材で有名になったマイケル・ムーア監督の6年ぶりの新作ドキュメンタリー『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』は、多くの人にすすめたい映画だ。例えば覚せい剤所持で逮捕された清原被告は、ポルトガルではどんな薬物使用も罪に問われないことをこの映画で知ったら「栃木じゃなくてポルトガルに行っとけばよかった」と悔やむかもしれない。秋葉原殺傷事件を起こした加藤死刑囚は、ノルウェーには死刑制度がなく、しかも多くの重犯罪者たちに明るく優雅な一軒家が与えられていることに驚くかもしれない。世界は想像以上に広く、様々な価値観を持って暮らす人々がいて、米国や日本とは大きく異なる社会があることを、マイケル・ムーアはふんだんにジョークを交えて伝えている。
今回のマイケル・ムーアは米国を離れ、外の世界から米国を見つめ直す。海外への侵略戦争が思ったような戦果を上げないことに焦る米国の国防省から相談され、疲れきった米兵たちに代わってマイケル・ムーアが各国を侵略するという設定だ。もちろん、マイケル・ムーアが銃を握ることはない。彼の武器は取材相手を油断させて何でもしゃべらせてしまうメタボな外見とユーモラスなトーク術であり、そしてカメラだ。ヨーロッパや北アフリカに上陸し、その国々ならではの有益な社会政策をいただいていく。
これまで米国ライフル協会、ブッシュ政権、保険業界、ウォール街を相手に、体を張って闘ってきたマイケル・ムーアだが、米国内ではすっかり顔が知れ渡り、得意の突撃取材ができなくなってしまった。アカデミー賞授賞式典で「ブッシュよ、恥を知れ」とスピーチして以来、脅迫状が頻繁に届くようになり、自腹で屈強なボディガードたちを雇うはめになった。アメリカを愛するがゆえに問題提起してきたが、祖国を離れて取材せざるを得なくなったという次第。でも、海外を回ることで、逆に米国(そして米国に追随する日本)の問題点がありありと浮かび上がる。米国や日本の常識は必ずしも世界の常識ではないことが見えてくる。
序盤、マイケル・ムーアはフランスのとある食堂を訪ね、フレンチのコース料理で腹ごしらえをする。子どもたちが溢れるこの食堂は、ムーアいわく「三ツ星か四つ星クラス」の味を誇るが、ミシュラン本にはいっさい載っていない。それはここが、フランスのごく普通の小学校の中にあるカフェテリアだからだ。フランスの子どもたちは毎日美味しいそうな給食を楽しむことで、食事の大切さやマナーを学んでいる。食器はビンボーくさいプラスチックやアルミではなく、陶磁器が使われている。子どもたちと一緒にテーブルに就いたムーアがコーラを呑んでいても、誰もコーラに興味を示さない。シェフの手が掛かったコース料理に、コーラが馴染まないことを子どもたちは分かっているらしい。フランスの子どもたちは美味しいフレンチを味わい、級友とデザートを分け合いながら、一人前のフランス人へと育っていく。ジャンクフードを与えられている米国の子どもたちが、ムーアには不憫に思えて仕方ない。
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