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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 最良の「超展開」『華魂 幻影』

文芸作品かと思いきや、驚いた! 最良の「超展開」で魅せる映画『華魂 幻影』

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 とんでもない映画を観てしまった。

 実は最初、宣伝担当者から「ぜひ、試写に来てほしい」と電話をもらったときには、ちょっと躊躇した。なんだか文芸映画のような感じがしたからである。なにしろ『華魂 片影』のタイトルの下には、次のような言葉が記されている。

 突然咲いた一輪の毒々しい花、これは人間だれしもが潜在的に持っているであろう、「密かな欲望」をエネルギーに成長・繁殖しようとする植物だった。この植物は華魂は意志を持ち、世界を侵食する。

 この一文を読んで、これは気合を入れて観ないといけないと思った。

 そうして始まった上映。物語の舞台となるのは、閉館を決めた、うらぶれた映画館。主人公の沢村(演:大西信満)は、その映画館の映写技師。そんな彼の目には、最近ずっと画面に見えないはずの黒づくめの少女(演:イオリ)が映っていた。恋人たちが戯れる映画の中には、ありえない少女の姿……。

 夜、家に帰り、冷え切った関係の妻・みどり(演:川上史津子)のヒステリーにたまらず逃げ出した沢村は、その黒づくめの少女と出会うのだ。

 と、ここまで読んだ読者は幻想的な世界を描く重厚な作品だと思うのではあるまいか。筆者も、そうだと思っていた。

 だが、この映画の本質は少しずつ姿を現す。

 潰れかけた映画館で、支配人は内気なメガネの受付嬢(演:稲生恵)に、別れの記念に「パンティをくれ」と迫る。と、その支配人を演じているのは、フォークシンガーの三上寛ではないか。かつて、刑事ドラマの名作『大都会PARTII』で、伊佐山ひろ子演じるウェイトレスにデートをすっぽかされた怒りから、人質を取って東京タワーに立て籠もるという、どうしようもない犯人を演じた三上寛が、さらにどうしようもない姿で魅せるのだ。

 そのあたりから、映画は観客の予想もしなかった方向へと突っ走っていく。閉館にあたり最後の上映に詰めかける大勢の観客たち。

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