モンペの罵詈雑言と、ずさんな「人権派」弁護士……丸子実業高校いじめ自殺の真実
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この自殺を受けて、「悲しみに暮れる遺族」という称号を獲得した彼女は、周囲への攻撃をエスカレートさせる。そんな彼女の強力な同伴者として現れたのが、人権派弁護士として知られる高見澤昭治氏だった。自殺の原因を家族に求めた校長の会見に憤りを抑えかね、母親の代理人に就任した彼は、校長を殺人罪で告訴に踏み切るという異例の対応を行ったのだ。
準備書面で、高見澤氏は「校長は自己の行為によって裕太を自殺に追いやる虞があることを予見しながら(中略)裕太に対して登校するように約束させ、その結果、絶望と不安に駆り立てられた裕太を、12月6日自宅において自殺に追いやり殺害した」と記す。しかし、「絶望と不安に駆り立てられた」という裕太くんは、自殺の4日前に持たれた話し合いの中で、明るい声で「5日から登校します」と約束しているのだ。この話し合いは、録音テープに記録されていたものの、高見澤氏はこれを一度も聞いていないことが後の裁判で判明した。また、母親の証言も「他のバレー部員に、拳で殴られていた」と事実無根のものとなり、その供述に、一切信頼性がないことが明らかになっていく。
裁判所は、バレー部側の言い分をほぼ全面的に認め、母親に対して監督や部員などに損害賠償を支払うことを命じた。さらにその後、校長が起こした高見澤氏に対する損害賠償請求訴訟も校長側の主張が認められ、165万円の支払いと、新聞への謝罪広告の掲載が命じられた。だが、母親側は、損害賠償金を1円も支払っておらず、高見澤氏は、損害賠償金こそ支払ったものの「判決が間違っている」として、謝罪広告は掲載していない。
福田の丹念な取材が解き明かしたのは、部活内の陰湿ないじめと、それを隠そうとする事なかれ主義などではなく、「モンスター」として横暴に振る舞う母親と、彼女の抑圧によって自殺に追い込まれた裕太くん、「人権派」といわれる弁護士のあまりにもずさんな仕事ぶりだった。司法の判決によって、母親、弁護士の主張は退けられ、学校、バレー部側は全面的な勝利を収めた。しかし、ありもしない「いじめ」をでっち上げられ、高校時代をめちゃくちゃにされたバレー部員、そしてその保護者、学校が失った時間や心に負った傷の代償は計り知れない。そして何より、裕太くんが戻ってくることはない。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
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