深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.372
“霊性の震災学”と共鳴する樹海奇譚『追憶の森』自殺の名所でマシュー・マコノヒーは何を見た?
2016/04/28 17:00
#映画 #パンドラ映画館
アーサーと妻のジョーン(ナオミ・ワッツ)。森にはいないはずのジョーンの存在が、物語の後半では徐々に大きくなっていく。
主演のマシュー・マコノヒーは、クリストファー・ノーラン監督のSF大作『インターステラー』(14)ではロケットに乗って宇宙の最果てまで旅をし、人間を突き動かしているものは“愛”であることを突き止めた。『追憶の樹海』では地上にぽっかりと口を開いたブラックホールのような樹海を彷徨うことで失った愛の大きさを知る。人間を生かすも殺すも、このよく分からない愛というものらしい。『インターステラー』の宇宙飛行士がそうだったように、『追憶の森』のアーサーも不思議な力に導かれて、それまでずっと解くことができなかった難解な数式のヒントを手にすることになる。
『霊性の震災学』のタクシー運転手たちは運賃を払うことなく消えていった不思議なお客たちのことを温かく受け止め、「また逢うことがあれば、乗せてあげたい」と語っている。被災地で今も働く彼らは、死を悼み、死者を敬う気持ちが恐怖心よりも上回っている。『追憶の森』のアーサーにこの話をしたら、きっとうなずくことだろう。
(文=長野辰次)
『追憶の森』
脚本/クリス・スパーリング 監督/ガス・ヴァン・サント
出演/マシュー・マコノヒー、ナオミ・ワッツ、渡辺謙、ジョーダン・ガヴァリス、ケイティ・アセルトン、アンナ・フリードマン、アイ・ヨシハラ、リノ・タナカ、イクマ・アンドウ、ジュウゾウ・ヨシダ、スティーヴン・ハウィット、玄理
配給/東宝東和 4月29日(金)よりロードショー
(c)2015 Grand Experiment,LLC.
http://tsuiokunomori.jp
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