賞レースから外れた意外な話題作がめじろ押し!! 映画界のアンチテーゼ「日プロ大賞」GW開催
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メジャーな映画賞の多くは映画会社の力関係や人気俳優を抱える芸能プロダクションの思惑に左右され、作品としてのクオリティーが高くても賞レースから漏れてしまう秀作は少なくない。また賞レース以前に、邦画だけで年間500本以上も公開されている近年の日本映画界では、宣伝予算もなく上映館数も少なく、人目に触れないまま埋もれていく作品が山のようにある。様々なしがらみに捕われることなく、また公開規模にかかわらず、“いい仕事”をしているプロフェッショナルな映画人たちに脚光を当てているのが、映画賞レースの最後を飾る「日本映画プロフェッショナル大賞」(日プロ大賞)だ。三池崇史監督、黒沢清監督といった国内では映画賞とは無縁だった才能を、日プロ大賞は90年代から顕彰してきている。
今年で25回目を迎えた日プロ大賞だが、今年は従来の傾向とは異なるタイトルが受賞作に選ばれている。これまでインディペンデント系の作品を推してきた同賞だが、今年は東宝配給で全国公開された大根仁監督の『バクマン。』がベストテンの第1位、そして作品賞に選出された。『バクマン。』は日本アカデミー賞では話題賞のみに留まっている。『バクマン。』は漫画家デビューを目指す若者たちの物づくりに注ぐ情熱と葛藤をハイテンポに描き、退屈になりかねない漫画製作の現場をプロジェクションマッピングを導入するなどしてエンターテイメント化してみせた力作だった。大根監督の前作『恋の渦』は製作費60~70万円という超低予算映画だったが、日プロ大賞では若手キャストたちに新人俳優奨励賞を贈っている。メジャーとインディペンデントの枠に縛られない大根監督の活躍は、もっと評価されていいだろう。
『ピース オブ ケイク』『深夜食堂』とコミック原作もの2作に出演した多部未華子が主演女優賞に選ばれているのも注目される。演技力はすでに折り紙付きな多部だが、映画賞の受賞は新人時代にまで遡ることになる。大根監督の劇場デビュー作『モテキ』もそうだが、格式を重んじる映画賞ではコミック原作ものは往々にして軽視される傾向にある。今年の日本アカデミー賞作品賞『海街dairy』もコミック原作だが、豪華女優陣を並べたカンヌ出品作『海街dairy』のことをコミックものという認識だった日本アカデミー賞会員はほぼいなかったはず。人気コミックの知名度に頼っただけの映画化企画はもちろん勘弁してほしいが、オリジナル脚本>文芸小説>エンタメ小説>コミック原作という映画賞の安易な格付けの仕方も見直すべき時期にあるようだ。
今回のもうひとつの注目ポイントは、売れっ子俳優・染谷将太と主演男優賞を分け合った形の川瀬陽太。テレビドラマしか観ない人には見慣れない名前だが、ピンク映画やインディペンデント系の映画に数多く出演してきた名バイプレイヤーだ。冨永昌敬監督の『ローリング』ではハレンチ行為で退職した元高校教師を軽妙に演じ、味のある存在感が改めて評価された。授賞式の場でどんなスピーチが飛び出すのか楽しみ。黒沢清監督と『トウキョウソナタ』『贖罪』『岸辺の旅』などでコンビを組んできた芹澤明子撮影監督に特別功労賞、橋口亮輔監督に7年ぶりの新作長編『恋人たち』を撮らせた深田誠剛&小野仁史プロデューサーに新進プロデューサー賞を贈るあたりも日プロ大賞らしい。
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