高額クラブ出現で激化するスポーツクラブ生き残り戦線「老人が歩けなくなる……」
#社会
「このままでは歩けなくなって、寝たきりになってしまう」
脚力維持のリハビリをしていた80代の男性は、悲痛な面持ちでこう語った。
東京都大田区の閑静な住宅街にあるフィットネスクラブ「インスパ洗足池」が先ごろ「賃貸借契約期間の満了」を理由に、6月末での閉店を発表。同所は2009年からの営業だったが、それ以前もスポーツクラブではあった。
もとは1980年代に流行したラケットボールやエアロビクスのスタジオだったが、ブームが去った2002年からは女優の釈由美子がイメージキャラクターを務めた「ワウディー」に代わった。
しかし、運営会社ワークアウトワールド・ジャパンは、08年に約32億円の負債を抱えて破産。クラブは別会社が引き継いだが、これまた倒産。現在は株式会社ロックスが運営。10年以上も長く通ってきた前出の男性会員は「運営会社の変更は会員に詳しく告知されないので、自分が支払っている会費がどこへいっているか、よくわからなかった」と話している。
今回の閉鎖はクラブ運営の問題ではなく、老朽化したビル側が建物を解体して新築マンションを建設するということだが、移転するほどの体力はなかったようだ。
問題は、運営はコロコロと変わっても変わらずにクラブに通い続けてきた常連たち。会員は60代以降の高齢者となっている者が多く、中には90代もいる。同クラブで体を動かすことが日常生活のサイクルになっていたため、閉店による運動不足には不安が大きいと話す。
「顔見知りの会員はみんな言ってますよ。足腰が弱って歩けなくなり、寝たきりになっちゃうんじゃないかって。近くに手ごろなクラブはないので、どうしたものか。このクラブは定年退職した我々高齢者の社交場としての機能もあったんですよ。運動だけでなく、地域の情報を共有したり、孤独な老人を減らす効果もあったんですけどね。仲間との会話があれば認知症にもなりにくかったんじゃないかと思ってましたし」(同)
住宅街にポツンとそびえ建つフィットネスクラブは、ちょうど丘の谷間にあって、他のクラブに行くためには大きな坂を越えなければならず、高齢者が自転車や徒歩で行くのは難しいという。
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