「いったい誰のため?」フジ“子役たちの引きつった笑顔”が物語る、野球中継の未来
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これは何も、フジテレビに限った話ではない。たとえばラジオ中継では4月7日に、NHK第一、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の4局がそろって巨人戦を中継する、という出来事があった。ライオンズ戦がなかったとはいえ、「パ・リーグ聞こうぜ」の文化放送まで、いったいなぜ?
10年前ならいざ知らず、これほど「多様性」が叫ばれる時代にあってこの編成は、未来や現在の野球ではなく、過去の栄光しか見ていないから、と言わざるを得ない。
結局、野球中継は数字が取れない、のではない。数字を取るための工夫が足りないのだ。たとえば、メジャーリーグ中継では一般的になりつつある投球や打球情報を細かく解析・可視化する「トラッキングシステム」の活用。今回のフジテレビの野球中継は、日本における「トラッキングシステム」の業界トップ・データスタジアム社がサポートしていたのだから、技術的にはできたはずだ。
データ的なものでは少数のコアなファンにしか訴求できない、というのなら、プロレス的な盛り上げ方をしたっていい。今回であれば、ヤクルトのお騒がせマスコット・つば九郎がトラ党・加藤清史郎君にどんどん横ヤリを入れる、といったことだってできただろう。阪神戦じゃない、と言われようとも、子どもたちの引きつった笑顔を見せられるより、野球ファンであればそっちのほうがよっぽど楽しめるはずだ。
『プロ野球ニュース』(フジテレビ系)の初代キャスターである佐々木信也は、自著『「本番60秒前」の快感』(2009年、ベースボール・マガジン社新書)の中で、「野球演出家」の必要性を訴えている。
《ヒーローインタビューにしてもそうですが、現状の野球界を演出家としての視点で眺めたとき、改善したほうがいいのではないか、と思われるポイントは山ほどあります》
佐々木のこの指摘は、「球場演出」を中心に述べたもの。この本が上梓されて以降、佐々木が期待した通り、野球場の演出方法は急激に進化を遂げている。それが、観客動員やファンクラブ会員数の増加につながっている。
むしろいま必要なのは「野球演出家」ではなく。「野球“中継”演出家」だ。本来それは、番組プロデューサーやディレクターの役割であるはずなのだが……。今のままでは、野球中継に未来はない。
(文=オグマナオト)
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