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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.370

生きづらさを感じる若者たちへの新しい福音か? 現代社会の黙示録『アイアムアヒーロー』『太陽』

taiyo01神木隆之介&門脇麦主演作『太陽』。蜷川幸雄演出の舞台『太陽2068』で綾野剛と前田敦子が演じた役に2人は挑んでいる。

 今回の『太陽』ではノクスかキュリオかという選択を強いられ、主人公たちは大いに悩む。キュリオとしてのこだわりを棄ててノクスになることは、自分自身のアイデンティティーを全否定することに繋がるのではないか。自分の魂を売り渡すことになるのではないかという罪悪感や恐怖感が付きまとう。ノクスとして居心地のよい生活が約束されていても、その中に溶け込んでいった自分はもはや自分ではないのではないか。ノクスになれば瞬時に忘れ去るだろうちっぽけだけど大きな悩みが、断末魔の叫びを上げる。

『アイアムアヒーロー』の世界では、生き残った人間よりもゾンビ化してしまった人たちのほうが、貧困や人間関係や社会格差にも悩まずに済み、苦しみから解放されることになる。『太陽』では新人類ノクスの仲間になることで、上流社会での快適極まりない生活が待っている。でも果たしてそれが自分にとっての本当の幸せなのか。そもそも自分とは一体何者なのか。自分にいちばん適した世界はどこにあるのか。そして、自分は世界とどう関わり合うのか。日本で生まれた2つのSF作品『アイアムアヒーロー』と『太陽』は、アイデンティティーに関わる深遠な問題を観る者に投げ掛けてくる。
(文=長野辰次)

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『アイアムアヒーロー』
原作/花沢健吾 脚本/野木亜紀子 監督/佐藤信介
出演/大泉洋、有村架純、吉沢悠、岡田義徳、片瀬那奈、片桐仁、マキタスポーツ、塚地武雅、徳井優、長澤まさみ 配給/東宝 R15+ 4月23日(土)より全国ロードショー
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (c)2009 花沢健吾/小学館
http://www.iamahero-movie.com

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『太陽』
原作/前川知大 脚本/入江悠、前川知大 監督/入江悠
出演/神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、水田航生、村上淳、中村優子、高橋和也、森口瑤子、綾田俊樹、鶴見辰吾、古舘寛治
配給/KADOKAWA  4月23日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
(c)2015「太陽」製作委員会
http://eiga-taiyo.jp

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