“北朝鮮スペシャリスト”は、もういらない!? 対立悪化で韓国大学から専門養成学科が消滅へ
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韓国の大学には「北韓(北朝鮮)学科」が存在することをご存じだろうか? その名の通り、北朝鮮のすべてを学べる学科である。日本では見慣れない学科だが、韓国が置かれた状況を考えると、あっても不思議ではないだろう。
韓国で北朝鮮学科が設けられ始めたのは、1990年代。当時は“南北統一”に対する韓国人の関心が最も高かった時期で、いずれ迎えるであろう統一に備えて、北朝鮮をもっと知ろう、という動きがあったようだ。
この学科で学べるのは、北朝鮮の政治、法律、経済、文化、芸術など、北朝鮮のほぼすべて。もちろん、軍事体制や外交関係など、韓国と関わるところにも深く入り込む。こうして体系化された“北朝鮮学”の目標は、北朝鮮の専門家・研究者を養成すること。一時期は前途有望な学問とされ、興味を持つ学生が多数集まっていたようだ。
ところが10校近くにあった北朝鮮学科は、近年は廃止、もしくは政治外交学科などに吸収され、来年度は全国にたった1校しか残らないという。
その理由としてまず挙げられるのが、南北問題だ。近年繰り返されている北朝鮮の核実験や、韓国政府による開城公団(唯一の南北共同事業)の韓国人従業員撤収で、南北関係は過去に例のないほど凍りついている。今のままだと、南北統一はほぼ不可能といっても過言ではない。2014年の新年会見で朴槿恵大統領は「南北統一に備えて“統一憲法”作りに取りかかる」などと発言したが、今となって“ホラッチョ”といわれても仕方あるまい。
そしてもうひとつの大きな理由は、北朝鮮学科卒業生の就職難だ。北朝鮮学は確かに意義のあるものだが、実際のところ、それを生かす企業や機関、団体はほとんどない。韓国では「統一部」という国家行政機関で南北の交流などの業務を行っているが、540人の職員のうち、北朝鮮学科出身は12人しかいない。一般企業も状況は同じだ。過去に北朝鮮との事業を進めていた某企業の関係者によると、「今のような雰囲気では、もう北朝鮮学専攻者を採用する理由がない」という。
そのため就職活動が始まると、この学科に入ったことを後悔する学生がほとんどだという。「北朝鮮学は、未来へ投資するための特殊な学問」という声も上がり、学科廃止に反対する運動も起きているが、需要がないなら仕方がないという人が多いようだ。
南北問題はともかく、就職難を理由に学科がなくなるのは、どこか寂しい。韓国の若者たちにとっては、統一問題よりも個人の生活のほうが切実なのだろう。南北統一の実現は、さらに先延ばしとなりそうだ。
(文=李ハナ)
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