神様に祈りを捧げる教会は“悪魔の巣窟”だった!? 『スポットライト』が照らし出した平穏社会の暗部
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カトリック教会の司教たちは、自分が治める教区内の神父たちが起こした不祥事をなかったことにしてローマ法王庁への出世を遂げてきた。警察も司法関係者たちも見せかけの平穏を保つことで、それぞれの安定した生活を守ってきた。古い伝統を誇るカトリック教会、そしてボストンという街の腐った暗部に、ロビーたちはメスを入れることになる。当然ながら取材記者たちも無事では済まず、吹き出す膿を全身に浴びることになる。カトリック教会の神父による性犯罪は1970年代からすでに問題になっていたが、地元でいちばんの権威を誇っていたボストン・グローブ紙はそのことを90年代になってから目立たない小さなベタ記事でしか扱っていなかったことが明らかになる。
記者の心がこもっていないベタ記事は、記者や新聞社が「我々はちゃんと事実を記事にした」という自己弁護のためのアリバイづくりでしかない。ボストン・グローブ紙は、以前から性的虐待に苦しんでいる子どもたちがいることを知りながら、ずっとスルーし続けてきたのだ。被害者たちの痛みを受け止め、声を発することができない人たちの声を拾い集め、さらに裏付け調査することで、ようやく血の通った記事が生まれる。新聞が売れなくなった理由は、インターネットの普及や若者の活字離れだけではなかった。『スポットライト』は巨大宗教組織の闇だけでなく、メディアに関わる人間の足元も照らしてみせる。神なき時代に迷える人々の指針となるのは、真実以外のなにものでもない。
(文=長野辰次)
『スポットライト 世紀のスクープ』
監督/トム・マッカーシー 脚本/トム・マッカーシー、ジョシュ・シュガー 撮影/マサノブ・タカヤナギ 出演/マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、スタンリー・トゥッチ
配給/ロングライド 4月15日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
Kerry Hayes(c)2015SPOTLIGHT FILM,LLC
http://spotlight-scoop.com
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