神様に祈りを捧げる教会は“悪魔の巣窟”だった!? 『スポットライト』が照らし出した平穏社会の暗部
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元タクシー運転手で、一度取材相手に喰らい付いたら離さないスッポン記者のマイク(マーク・ラファロ)、祖母が敬虔なカトリック信者であることから複雑な想いを抱く女性記者のサーシャ(レイチェル・マクアダムス)らがロビーの指揮のもと取材を始める。しかし、裁判所はこの件に関する資料をいっさい公開しようとしない。弁護士たちも固く口を閉ざしたまま。カトリック教会のスキャンダルに触れることは、保守的な市民の多いこの街では大タブーなのだ。ニクソン大統領失脚の顛末を描いた『大統領の陰謀』(76)では、盗聴事件を追うワシントン・ポスト紙の記者に大きなヒントをもたらす“ディープ・スロート”が現われたが、本作でも特ダネ班に有力な電話が掛かる。その電話を掛けてきたのは心理療養士で、30年間にわたってカトリック教会の聖職者たちが関係してきた性犯罪を調べ上げたという。彼の調査によると、独身であることを義務づけられているカトリック教会の神父たちの6%がペドフィル(小児性愛者)であるという。子どもたちへの性的虐待事件はボストンだけでなく、全米中、いや世界中で大昔から繰り返されてきたのだ。自分たちが追っていた事件は巨大な氷山の一角に過ぎないことを知り、ロビーたちは愕然とする。
被害者たちを半年がかりで調べた結果、身の毛のよだつ実態が明るみになっていく。カトリック教会の変態神父たちは教会に祈りを捧げに通う子どもたちの中から、片親で経済的に恵まれない家庭の子やホモっけのある口数の少ない男の子に狙いを定めて、自分たちの性欲の餌食にしていた。神父から性的行為を強要された子どもたちは到底逆らえない。もし親にバレても、示談金を渡すことでうやむやにすることができる。やがてトラウマを抱えた子どもたちの多くはドラッグ依存かアルコール依存に走り、自殺するか廃人化してしまう。辛うじて生き残った被害者が訴訟を起こそうとしても、カトリック教会と結びつきの深い警察や司法関係者によって巧みにもみ消されてしまう。しかも、問題を起こした神父はカトリック教会内で処罰されることなく、別の教区へと転任し、さらに被害者を増やし続けていた。カトリック教会は神への信仰と同時に、子どもたちを食い物にする悪魔も世界中にまき散らしていたのだ。
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