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広島ローカルネタも満載! 松田龍平×前田敦子のホームドラマ『モヒカン故郷に帰る』

0401_main.jpg(C)2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会

 今週取り上げる最新映画は、松田龍平と前田敦子が恋人同士を演じる、笑いあり感動ありの娯楽作と、自主映画監督らのゲスな生きざまを描く異色の人間ドラマ。キャラクター設定は一見極端だが、家族や仲間との接し方や距離にいつの間にか共感を覚える2作品だ。


『モヒカン故郷に帰る』(4月9日公開)は、『キツツキと雨』(2011)、『横道世之介』(12)の沖田修一監督が脚本も手がけて描くホームドラマ。モヒカン頭の売れないバンドマン・永吉は、妊娠した恋人・由佳との結婚を報告するため、瀬戸内海の戸鼻島(とびじま)へ7年ぶりに帰郷する。実家には、矢沢永吉を愛する頑固な父・治と広島カープファンの母、さらに偶然帰省していた弟もいて、久々に家族がそろう。だが大宴会の夜に治が倒れ、病院での検査の結果、ガンを患っていることが明らかになる。

 松田と前田に、治役の柄本明、母役のもたいまさこ、弟役の千葉雄大を加えた5人の間に流れる、独特の間とゆるい笑いがたまらない。戸鼻島は広島県下という設定の架空の島だが、同県出身の矢沢永吉や、カープ戦のテレビ中継など、ローカルネタの活用も巧み。とりわけ、治が顧問を務める中学校吹奏楽部による、矢沢の名曲「アイ・ラヴ・ユー、OK」の頼りない演奏がいい味で、島の素朴な景観と、のんびりした人間模様によくなじむ。長く離れていた家族の心が次第に近づく過程に、しみじみと温かい気持ちになる好作だ。

『下衆の愛』(4月2日公開)は、年間出演作が5本以上という年もざらにある、売れっ子の個性派俳優・渋川清彦がゲスな映画監督に扮したドラマ。40歳前にして夢をあきらめきれない自主映画監督のテツオは、映画祭での受賞経験を心の支えに、女優を自宅に連れ込む自堕落な生活を送っていた。だがある日、才能あふれる新人女優ミナミと出会い、新作映画の実現に向けて立ち上がる。『裸と動物』にこだわるプロデューサーの貴田、枕営業にかける女優の響子、ハメ撮りで生計を立てる助監督のマモルなど、映画界の底辺であがく仲間たちと最後の賭けに挑むテツオに、現実の壁が立ちはだかる。

 監督・脚本は、『グレイトフルデッド』(13)が世界30以上の映画祭で上映され注目を集めた内田英治。でんでん、忍成修吾、岡野真也、津田寛治、古舘寛治らが脇を固めた。登場人物ほぼ全員が身勝手でだらしなく、感情移入をなかなか許さないが、後半になって各キャラの魅力が出そろう構成が巧い。見苦しくも尊い映画愛、哀しく切ないエロスが散りばめられ、映画好きなら笑い泣き必至の快作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『モヒカン故郷に帰る』作品情報
http://eiga.com/movie/82074/

『下衆の愛』作品情報
http://eiga.com/movie/83066/

最終更新:2016/04/01 23:00
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