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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 成海璃子、初濡れ場『無伴奏』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.367

成海璃子は初濡れ場でどこまでさらけ出したか? 痛みを伴う大人への通過儀礼を描いた『無伴奏』

mubanso03響子、渉、祐之介、エマは海へと向かう。このときの響子は、まだ自分を含めた4人の複雑すぎる人間関係に気づいていなかった。

4度にわたる官能シーンに加え、未知なる禁断の世界に遭遇することで内面の葛藤を生じる響子役はかなりの難役であり、演技キャリアのある成海璃子だからこそ演じ切れた役だろう。響子とは性格もファッションセンスもまったく異なるエマ役を演じた遠藤新菜は、オーディションで抜擢され、ワークショップを経ての参加となった新進女優。成海璃子、池松壮亮、斎藤工ら若手実力派のアンサンブルの輪の中に、遠藤新菜は体当たりで入っていく。エマ役に成り切るために髪をショートカットにし、小ぶりな美乳もあけっぴろげに披露する。人前で屈託なくヌードをさらすエマ、初体験中もバストトップだけはしっかり腕でガードする響子。濡れ場でのリアクションも対称的だったエマと響子は、その後も真逆な運命が待ち構えている。響子、渉、祐之介、エマたち4人の青春物語は苦味のある結末へと収斂していく。

響子が奇妙な大人の世界を知る直前、とても青春映画らしい清々しいシーンが用意してある。響子たち4人は車に乗って海へと出掛ける。水着に着替えた4人は、荒々しい海のしぶきに嬌声を上げながら海水浴を楽しむ。美しい青春のひとコマだ。浜辺で渉と2人っきりになった響子は、昼間は見えないはずの月の話を始める。「ねぇ、気づいていた? 初めてキスをした夜の月は、まだアメリカの足跡はなかったのよ」。まだアポロ宇宙船は月面に到着しておらず、月は汚れを知らなかった。イノセントな輝きを月が地球に届けていた最後の短い夏。もう二度と戻ってくることのない大切な時間が、スクリーンの中を流れ去っていく。

(文=長野辰次)

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『無伴奏』
原作/小池真理子 監督/矢沢仁司 出演/成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜、松本若菜、酒井波湖、仁村紗和、斉藤とも子、藤田朋子、光石研
配給/アークエンタテインメント R15+ 3月26日(土)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
(c)2015「無伴奏」製作委員会
http://mubanso.com
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最終更新:2019/07/29 16:14
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