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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.366

3.11後の格差社会、上から見るか下から見るか? 岩井俊二の帰還『リップヴァンウィンクルの花嫁』

rvw-bride03七海は従来の価値観に縛られず、新しい人生を歩んでいく。3.11後の社会に希望を見出そうとする岩井監督の心情が投影されたキャラクターだ。

 世間一般から見ると、七海はあまりにも世間知らずで、幸せの崖っぷちから不幸のどん底へと真っ逆さまに墜落しているように映る。でも、岩井監督にしてみると、「逆から見れば、ぐんぐんと上昇している」女の子の物語なのだ。何が幸せで、何が不幸かは世間ではなく、自分自身が決めればいいこと。七海は世間的な幸せを失った代わりに、ぐんぐんと自分だけの幸せへと近づいてく。黒木華演じる七海は、序盤は周囲に流されてばかりいた頼りなさげな女の子だったが、なんでも屋の安室や代理家族で姉を演じた真白といったワケありな人たちと出会い、新しい世界を体験する。物語の後半には七海は大きな海でも裸で泳いでいけるほどのタフさを身に付けるようになっていく。

 岩井監督のブレイク作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の少年たちがそれまでとは異なる視点から打ち上げ花火を眺めたように、本作の主人公である七海もそれまでの人生をリセットし、異なる視点を手に入れる。彼女の前には真新しい風景が広がっている。そこはとても風通しのよい世界だった。
(文=長野辰次)

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『リップヴァンウィンクルの花嫁』
監督・脚本/岩井俊二 撮影/神戸千木 出演/黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、金田明夫、毬谷友子、佐生有語、夏目ナナ、りりィ配給/東映 3月26日(土)より公開 
(c)RVWフィルムパートナーズ
http://rvw-bride.com

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