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じゃまおくんのザオリク的マンガ読み

壮絶! リストラ漫画家のお遍路旅『55歳の地図』で知る、四国の人のあったかさ

zaoriku0313.jpg『55歳の地図』(黒咲一人/日本文芸社)

 人が人生の岐路に立った時に選ぶ道のひとつに、「お遍路」というものがあります。いわゆる四国八十八カ所のお寺を回る、日本最大規模のスタンプラリーです。最近は旅行会社のツアーなんかもあったりして、大変人気があるようですね。

 今回ご紹介するのは、お遍路をテーマにした漫画『55歳の地図』という作品。「実録!リストラ漫画家遍路旅」というサブタイトルがついており、仕事がなくなり、食えなくなってしまった漫画家、黒咲一人先生が自分探しのためにガチの「お遍路さん」をする、壮絶なドキュメント漫画なのです。

 黒咲先生は2003年ごろから原稿の新規依頼が途絶え、連載していた雑誌が廃刊になったりと、漫画の仕事が徐々になくなっていきます。そして、ついに完全に廃業状態となった黒咲先生は、身辺整理を始めます。しかし、ハローワークに行っても、漫画しか描けない55歳のオッサンに職が見つかるはずもありません。

 そんな黒咲先生の窮状を心配して駆けつけてきたのが、漫画家仲間のさとう輝先生。『江戸前の旬』がロングヒットしており、リストラとは無縁なお方です。さらに御大、本宮ひろ志先生も、ビルのワンフロアーをタダで貸してくれるなどと言ってくれます……。うーん、いい人たちだ。

 さらに、犬漫画の帝王『銀牙』『銀牙伝説WEED』などでおなじみ高橋よしひろ先生も、「仕事を手伝わないか?」と電話をかけてきてくれました。

 せっかく心配して声をかけてくれているんだから、素直に高橋先生の仕事を手伝えばいいじゃないかと思うのですが、そこはかつて自分も第一線で描いていた漫画家だというプライドがあるのでしょう。結局、自分探しの道、四国遍路の旅を選びます。

『55歳の地図』というタイトルで思い出すのが、尾崎豊の名曲「十七歳の地図」です。尾崎は「盗んだバイクで走りだす」のですが、黒咲先生の場合は「5,000円で買った中古三輪チャリ」で走りだします。これが55歳の青春なんでしょうか……。あまりの先行き不透明感で、読んでいるこっちも暗澹たる気分になります。

 それにしても黒咲先生、どうも要領が悪すぎるというか、自らピンチを招き入れている感があります。出発の日は冬が差しせまる11月、どう考えても春や夏に比べて、放浪旅をするにはつらい時期です。さらに土砂降りの雨。何も、こんな日を選ばなくても……って気がしますが。しかも、運が悪いことに途中で三輪車のタイヤがパンク。

 タイヤを修理するために土砂降りの中を右往左往し、予定のフェリーの時間に間に合わず……。まだ東京なのに、すでに瀕死状態です。大丈夫なのか、こんなんで。

 四国へ上陸後、旅路用にホームセンターでテントを買って一国一城の主気分になるも束の間、相変わらず大ピンチです。なにしろ、総重量20キロの全財産を自転車に積んでいるため漕ぐことができず、結局、常に自転車を手押しして移動することになります。案の定、徳島で早速、死にそうになります。朝から胃袋に入れたのは、缶コーヒーとビールのみ。カロリーメイトぐらい買っておけばいいのに……。

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