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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > ザコシショウの「破壊力と演出力」

ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2016』評 王者・ハリウッドザコシショウの「破壊力と演出力」

 第三に、ものまねの題材として昔のマンガなどのマイナーなものは選ばず、誰でも知っている有名なものばかりを並べた。特に、野々村竜太郎元県議など、多くの人に伝わりやすいような題材も積極的に採用。その上で、自分が今まで積み上げてきた笑いの根幹の部分はそのまま貫き通していた。

 番組を録画している人は、ハリウッドザコシショウの1本目のネタが終わった直後に画面に映された、司会者、審査員、観客の反応を見返してみてほしい。あの場に居合わせた彼らの反応は、単に「面白かった」とか「笑えた」といった通常のレベルのものはなかった。まるで飛行機墜落事故の瞬間を間近で見た人のように、一様に「とんでもない光景を目撃した!」「今のはなんだったの!?」といった意味の笑みを浮かべていた。爆笑の「爆」が爆発の「爆」と同じなのは偶然ではない。ハリウッドザコシショウの仕掛けた笑いの核爆弾は、確かにあの瞬間、閃光と共に爆発していたのだ。

 会場にいた芥川賞作家の羽田圭介は、ハリウッドザコシショウのすごいところは「めちゃくちゃ偏った世界観をいきなりやってきて、それを受け取る側に有無を言わさず飲み込ませてしまう破壊力」だとコメント。さらに、それを支えているのは「ものすごい高い演技力と演出性」だと喝破した。私もこの見解に全面的に同意する。

 ハリウッドザコシショウがピン芸の大会『R-1ぐらんぷり』で優勝することができたのは、もともとあった破壊力に加えて、それをわかりやすく多くの人に伝えるための演出力を身につけたからだ。「面白いことをやりたい」という自分の中からわき上がる衝動に向き合い、戦い続けてきたハリウッドザコシショウの24年の集大成。カルト芸人の頂上に君臨していた男がついに、表の世界でもピン芸人の頂点に立った。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

最終更新:2016/03/08 18:26
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