独身者は収容所送りとなる恐怖の婚活コメディ! 『ロブスター』の男たちは居場所を見つけられるか
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少子化の進んだ今の日本では、子どもが2人以上いる一家は賞讃され、子どものいない夫婦は肩身が狭い。ましてや、いつまでも独身のままでいると、マジメに働いていても世間から一人前扱いされない。どうやら欧州でも同じ傾向らしい。ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』は、結婚できない独身者は犯罪者扱いされる近未来社会を舞台にしたブラックなコメディだ。脚本のユニークさから、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーら異常なほどの豪華スターたちが顔をそろえている。
ランティモス監督はかなり風変わりな作風で知られる。日本でも劇場公開された『籠の中の乙女』(09)では、父親によって幼い頃からずっと自宅に監禁された状態のまま育てられた3人姉弟たちのおかしな性春が描かれた。レイ・ブラッドベリの短編小説『びっくり箱』を思わせる内容だったが、なぜ父親が子どもたちを監禁して、おかしな教育を施したのか理由が詳しく説明されることはなかった。今回の『ロブスター』も理詰めで追いかけているとワケが分からなくなる。独身者は施設に入れられて動物に換えられてしまうのだが、どのような工程を経て動物に換えられるのかは明かされない。説明がない分、観客は自由な解釈を委ねられている。
主人公のデヴィッド(コリン・ファレル)は冴えない中年男。お腹のたるみ具合がかなり気になるメタボ体型だ。長年連れ添ってきた妻が家を出てしまい、デヴィッドはとある施設へと連行される。この施設は一見すると高級リゾートホテルなのだが、実は国家が運営する矯正施設であり、独身者は全員ここに強制収容されることになっている。独身者がここに滞在できるのは最大で45日間。その期間中に、この施設内にいる他の独身者の中から結婚相手を見つけなくてはならない。いわば、国家が主宰する強制参加型の“ねるとんパーティー”だった。
共産圏の国がねるとんパーティーを開いたら、こんな感じなのだろうか。再婚相手を見つけることにやぶさかではないデヴィッド、足の悪い男(ベン・ウィショー)、滑舌の悪い男(ジョン・C・ライリー)の独身男3人衆だったが、無理強いされるとその気も萎えるというもの。女性たちも同じらしく、施設内で行なわれる食事会やダンスパーティーにはどんよりとした空気が漂う。男性独身者のヤル気を高めようと、メイド服姿の女性スタッフが部屋を訪れて、素股サービスを施してくれるのだが、射精することは許されない。あくまでも男たちをムラムラとさせることが目的であって、蛇の生殺し状態である。もしも、こっそり自慰をしていることが運営側にバレると厳重な処罰が待っている。恐ろしい体罰を目にして、デヴィッドの下半身はすっかり縮み上がってしまう。
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