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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 月9『いつ恋』第6話レビュー
構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

忘れられない苦しさと、忘れようとする苦しさ――帰る場所はどこにあるのか?『いつ恋』第6話

 あるいは、練にしてもまたそうだ。震災を経て、それこそ「おうちもなくなって」「どこも行くとこなくなって」しまった彼は、見た目も雰囲気も5年前とは大きく違ってしまっている。5年ぶりに再会した音に対して「あんたにはもうわからないよ。わからない。もう違うから」と冷たく言い放つ練は、帰る場所をどこかあきらめてしまっているようでもある。帰らない、もしくは、帰る場所などもうどこにもない、という生き方を選んでしまった練には、もうどんな言葉も届きそうにない。

 帰る場所を忘れられない苦しさと、帰る場所を忘れようとする苦しさが、ともにある。だが、希望もまだ残っている。それは、帰る場所を自分で作るという希望だ。

 かつて練の同僚だった佐引(高橋一生)は、まだ東京にいる。会津出身の彼は、まだ東京でしぶとく生き抜いている。もう、金髪だった髪は黒く染まっている。そして、初めて会った音に向かって「ボルトに走り方を教えてやったの、俺なんだよ」と、冗談を言う。これまで「小室哲哉のブレーンだった」という忘れられない思い出を抱えていた佐引は、自分の帰る場所を自分で作ろうとしているのだろう。それは朝陽や練にとっての、あるいは私たち視聴者にとっての、希望だといえる。

 音の家にはまだ、桃の缶詰が置かれている。引っ越し屋さんだった練から初めて会ったときにもらった桃の缶詰が。音もまた、自分と、そして練の帰る場所を作ろうとするのだろう。それが恋という、「どこも行くとこなくなった人の、帰るとこ」だ。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは@aizawaaa

最終更新:2016/02/25 18:00
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