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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  >  月9『いつ恋』第5話レビュー
構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

震災前日、“真実の場所”で暴かれた想い――ウソと本当を見分ける方法『いつ恋』第5話

itsukoi0217.jpgフジテレビ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では、2つの家が用意されている。ひとつは練(高良健吾)が暮らす安アパート。もうひとつは、静恵ばあちゃん(八千草薫)が暮らす一軒家だ。この2つの家は、ドラマの中で異なる機能を持っている。練の安アパートはウソの場所であり、静恵ばあちゃんの一軒家は本当の場所である。登場人物はそのことに気付いてはいないかもしれないが、この機能によって動かされている。

 第1話、練の安アパートでは練と木穂子(高畑充希)が寄り添って眠っていた。後々明かされるが、木穂子はこのとき自分がバリバリのキャリアウーマンであると練にウソをつき、そういった自分を演じていた。殺風景な部屋はまるでセットのようで、人間のにおいというものがあまりない。何より、福島から出てきた練にとっては東京という街自体がウソの街だともいえるし、このアパートで交わされる会話はどこか空虚だ。

 一方で、静恵ばあちゃんの一軒家には生命力が満ちている。瑞々しく花が咲き、太陽の光に照らされる。登場人物たちもこの家にいるとどこか自然な笑顔になり、いつもより生き生きとしているようだ。この家では、本当の自分でいることが許されている。東京という街に居場所のない彼ら彼女らにとっては、まるで自分の家のような場所だといえるだろう。

 だから第5話の修羅場は、静恵ばあちゃんの家で起きなくてはならなかった。ここは本当の場所だ。逆にいえば、ウソが許されない場所でもある。これまで練が、音(有村架純)が、木穂子が重ねてきたウソが、練の幼なじみである小夏(森川葵)の告発によって暴かれる。「だって、だってよ! みんなウソついてるもん。だって練が好きなのは木穂子ちゃんじゃねえべした。この人(=音)だべした!」と、小夏は心からの声を叫ぶ。登場人物の中で唯一東京に憧れ、東京の人間になろうとしている小夏の会津弁が、この言葉が真実であることを物語っている。

 その見方はすべての恋愛がそうであるように、ひどく独善的で一面しか見ていない。我々視聴者は小夏が知らない練と音と木穂子の物語を知っているから、そんなに単純なものではない、と言うことはできる。もっと人は複雑なんだと。だが、小夏の言葉が真実であるというのも確かだ。そして、小夏もまた、練に片思いをしていると我々は知っているため、彼女の言葉は胸に突き刺さる。

「……練は、そったおっかねえ顔する人じゃねがったもん。ウソばっかついでっからだ。言ったら? 好きなんだったら、好きです、って言ったら? 練、好きよ。練、好きよ、って。好きよ。好きよ。好きよ。好きよ……!」

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