トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 映画『いいにおいのする映画』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.360

スクリーンから漂う初々しいフェロモンの香り! 嗅覚を心地よく刺激する『いいにおいのする映画』

iinioinosurueiga03“ブルータスオーケストラ”の異名で知られるVampillia。彼らのライブに触発され、酒井監督は本作を撮り上げた。

 金子理江の放つ無自覚な色気に捕われて、スクリーンから目が離せなくなる。物語の後半、ヴァンパイアフィリアであることが発覚したカイトは、父モンゴロイドによって部屋の中に監禁されてしまう。レイもライブハウスに来ることを禁じられるが、それでもレイは魔法使いになるという夢を諦められず、そしてカイトを放っておくことができず、カイトが閉じ込められている部屋へと向かう。部屋には鍵が掛かっており、ドアを開けることができない。ドアの前に無言で佇むレイは、ある匂いを媒介にしてカイトと繋がることに成功する。でも、このときの匂いは、レイにとっては苦く、切ないものだった。つぼみのように無垢な存在だったレイはそれまで知らなかった匂いを身にまとい、少しずつ大人への階段を上がっていくことになる。

 レイの夢が叶った瞬間に、映像がモノトーンからパートカラーに変わるという視覚的アイデアに加え、実在の人気バンドVampilliaのライブ演奏がドラマを大いに盛り上げる。ギミックなしで、観客の色彩感覚、聴覚、そして嗅覚に訴え掛けるとてもレアな映画に仕上がっている。

酒井「自分の好きな場所や好きな人って、いい匂いがすると思うんです。この映画は自分の居場所を見つけることができなかった女の子が、ようやく自分の居場所を見つけて、その匂いを思いっきり嗅ぐ物語でもあるんです」

 本作を観て、スクリーンから匂いを感じ取った人は、二度三度とその香しい匂いに釣られて劇場に足を運ぶことになるに違いない。
(文=長野辰次)

iinioinosurueiga04.jpg

『いいにおいのする映画』
監督・脚本・編集/酒井麻衣 音楽/Vampillia
出演/金子理江、吉村界人、Vampillia、中嶋春陽
配給/SPOTTED PRODUCTIONS 2月6日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
(c)2015 Little Witch Production / MOOSIC LAB http://iinioi-movie.com

ページ上部へ戻る

配給映画