アンジェリーナ・ジョリー監督作がついに公開! 実録戦争サバイバル『不屈の男 アンブロークン』
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だが、アスリートとしていちばんの充実期にある20代前半で第二次世界大戦が勃発。米国と日本も太平洋戦争へと突入する。ルイは爆撃機B-24に爆撃手として搭乗。高性能を誇る日本の零戦と激しい空中戦が繰り広げられる。敵は日本軍だけではなかった。整備不十分な爆撃機に乗ったルイは太平洋上に放り出され、同胞のフィル(ドーナル・グリーソン)ら3人で救命ボートにしがみついたまま47日間にわたる漂流生活を余儀なくされる。仲間のひとりは餓死してしまい、ルイも疲労と空腹の限界に達したところ、日本兵によって救出される。ルイにとって日本という国は、敵国であるのと同時に命の恩人でもあった。
日本に送られたルイは大森捕虜収容所で暮らし始めるが、ここで本作のもうひとりの主人公というべき収容所の所長である渡邊睦裕伍長(MIYAVI)が登場する。大学出のインテリである渡邊は五輪出場経験のあるルイに目を付け、徹底的にいたぶることに喜びを感じる。ルイはそれでも決して渡邊に媚びることはせず、さらに渡邊のサディズムに火を注ぐことになる。ルイと渡邊の関係は、先日亡くなったデヴィッド・ボウイの主演作『戦場のメリークリスマス』(83)での坂本龍一との男同士のプラトニックな恋愛感情を彷彿させる。坂本龍一はボウイにハグ&キスされて昇天するが、本作での渡邊のルイへの熱い想いは一方通行のまま空振りで終わる。だが、ルイと渡邊の因縁はさらに新潟の直江津収容所へと舞台を移し、第2、第3ラウンドへと続くことになる。
オーストラリアに建てられた収容所のオープンセットはかなりリアリティーあるものとなっている。だが、収容所での生活はルイの主観的な視点で描かれており、渡邊以外の日本兵や他の捕虜たちとの交流が細かく描かれることはない。収容所での生活はどのようなものだったのか、虐待はあったのか。気になって直江津収容所の内情について記したノンフィクション『貝になった男 直江津捕虜収容所事件』(上坂冬子著)をめくってみた。この本の最初のページに収容所内で行なわれたクリスマスイブの余興時の写真が掲載されており、目が釘付けになる。アコーディオンやギターを手にした白人捕虜たちと日本兵たちが一緒ににこやかな表情で記念写真に収まっている。卑屈なムードを感じさせない、実に和やかな雰囲気の1枚だ。
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