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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 映画『ビハインド・ザ・コーヴ』
話題作の監督を緊急インタビュー!

アカデミー賞作品の反証ドキュメンタリーが公開! “反捕鯨”に潜む禁忌『ビハインド・ザ・コーヴ』

behindethecove04本作でデビューした八木景子監督。「配給や宣伝まで個人でやったのがよかったと思う。企業だったら抗議メールが殺到してたんじゃないでしょうか」。

 伝統のクジラ漁に誇りを持つ太地町の元捕鯨師たちと時間を掛けて交流を結ぶようになった八木監督は、米国の首都ワシントンへと飛ぶことになる。捕鯨と反捕鯨の歴史を調べていくうちに、クジラをめぐって日本と米国は様々な因縁で結ばれていることが分かった。中でも極めつけとなっているのが、反捕鯨運動のきっかけとなった1972年のストックホルム国連人間環境会議だ。この国際会議ではベトナム戦争で米軍が使用している「枯れ葉剤」が環境に及ぼす悪影響について討議されるはずだったが、米国政府が圧力を掛け、捕鯨問題にすり替えてしまったのだ。米国はベトナム戦争の国際的批判から逃れるために、捕鯨国・日本をスケープゴートに仕立てた──。この事実が記載された公文書が存在することを八木監督はワシントンまで確かめにいく。

 本作の終盤は怒濤の展開が待っている。反捕鯨問題の根底には米国人の日本人に対する差別意識がどうしようもなくあることを本作は指摘する。牛肉はOKで、鯨肉はNGというのは、単なる他国の食習慣への偏見、異なる食文化に対する不寛容さの現われに過ぎないと。自国の主義主張を一方的に押し付ける米国のやり方に八木監督は異議を唱える。

八木「決してアメリカバッシングのつもりで撮った映画ではありません。日本人の謙虚さは美徳でもあるわけですが、海外の国々と付き合う上ではその美徳は誤解や弱点にもなってしまうんです。『見ざる・聞かざる・言わざる』は海外でも知られていて、悪いことは言わない、口を挟まないというポジティブな意味で使われています。でも日本では言いたいこと、言わなくちゃいけないことも我慢すればいいみたいな意味になっている。ただ黙っていると標的にされてしまいます。米国人だけでなく、もちろん日本人にも差別意識はある。自分が食べ慣れているものには理解を示すけど、異文化の食べ慣れないものには理解を示そうとしない。理屈では解決できない感情論もそこにはあると思います。歴史や文化が異なることから偏見が生じることや感情論もあることを認識した上で、付き合っていく必要があるんじゃないでしょうか」

 ひとりの日本人女性の主張が、これから国内外にどう広まっていくのか注目したい。

(取材・文=長野辰次)

behindethecove05

『ビハインド・ザ・コーヴ 捕鯨問題の謎に迫る』
撮影・編集・監督/八木景子 製作・配給/八木フィルム 
1月30日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
Behind THE COVE(c)2015YAGI Film inc
http://behindthecove.com

●やぎ・けいこ
1967年東京都生まれ。ハリウッド系のメジャー映画会社の日本支社に2011年まで勤務。その後、自身の会社「合同会社八木フィルム」を設立。映画の製作経験のない中で『ビハインド・ザ・コーヴ』を撮り上げた。『ビハインド・ザ・コーヴ』は2015年に開催された「第39回モントリオール世界映画祭」に正式出品された他、海外特派員協会や国会議員向けの上映も行なわれ、波紋を呼んでいる。

最終更新:2016/01/26 20:00
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