トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > NHK痛快娯楽劇『ちかえもん』
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第115回

ダメな奴らは、かわいらしい――NHK×松尾スズキ『ちかえもん』という虚実皮膜の痛快娯楽劇

 とにかく、ダメ男っぷりがかわいらしい。せっかく「近松さんは芭蕉さん、西鶴さんに勝るとも劣らん物書きや」と褒められたのに「みんな親しげに名前で呼ぶのに、なんでわしだけ名字で呼ぶんでっか!」と、しょうもないことでキレてしまう近松は、なかなか名前を覚えることができない万吉に「ちかえもん」と呼ばれたことに怒るどころか、「かわいらしいやん」と、まさかのご満悦。かわいらしいは、正義なのだ。

『ちかえもん』は、“ええ年”をしたダメな男たちが虚実皮膜の世界の中でダメなまま懸命に生きる物語だ。おそらく近松は、優柔不断で意地っ張りで弱いままだろう。それは「親孝行ブーム」の元禄の世に、「不孝糖売り」なる怪しげな商売を喜々とやっている万吉の姿が示唆している。ダメだっていいのだ。『ちかえもん』は、ダメな奴らを「かわいらしい」と肯定する。

 果たして近松は、いかなる“気づき”を得て『曾根崎心中』を書き上げるのか、ひとときも見逃せない。てな、陳腐な言い回しはふさわしくないような娯楽傑作なのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 17:43
123
ページ上部へ戻る

配給映画