「僕は狂ってない」 TBS『クレイジージャーニー』で話題の写真家・佐藤健寿が語る、10年間の奇妙な冒険
#インタビュー #佐藤健寿
――本書に掲載されている中で、特に思い入れのある場所はどこでしょうか?
佐藤 10年前にインドに行った時の記録は、もともと誰に見せるためでもない日記として書いていたので、素直に旅の感想をつづっています。今回の本のために加筆はしましたが。あとは、タイで溺れかけた話ですね。人生で一番死にかけた状況だったんですが、必死だったのであまり覚えていない(笑)。後で思い出しつつ、苦労しながら文章にしました。
――10年間の旅を振り返って、何かご自身の中で変化はありましたか?
佐藤 行きたい場所のハードルが上がってきた、というのはありますね。パッと思いついて簡単に行ける場所が少なくなってきた。行きたい場所はもちろんあるけど、時間も費用もかかって、何カ月も前から申請しなきゃいけない。どんどんハードルが上がってきていますね。もちろん、冒険家ではないので、身近な場所にある奇妙なものも、もっと探していきたいとは思いますが。
――こんなにたくさんの奇界を見ていると、少し感覚がマヒしてしまう部分もありますか?
佐藤 それは当然あると思いますし、何かと比べちゃうってのはありますね。ある仏像を見たときに、“あの仏像のほうが大きかったな”とか。ただ、少数民族からロケットまで、僕が扱ってる範囲ってけっこう広いので、その都度、ジャンルを変えて、飽きないようにやってます。
――思わず笑ってしまうような場所も多いので誤解してしまいがちですが、佐藤さんの文章からは、考えを巡らしながら真摯に旅をする様子が伝わってきます。
佐藤 『クレイジージャーニー』(TBS系)に出ているほかの旅人たちもそうですが、本当に狂ってる人って、多分、こういう旅はできないんです。現地に行くと、すぐに危ないことになってしまいますからね。だから、クレイジーなことをやってる人ほど、ある意味では緻密で慎重な人が多いと思います。ただ、行く場所がおかしいだけなんです(笑)。
――スラムを旅する丸山ゴンザレスさんや、アラスカの写真家・松本紀生さんなど、本当にみなさん“クレイジージャニー”ですよね。
佐藤 謙遜するわけではないんですが、あの番組の中で、僕は一番普通の人間だと思います。行く場所は狂ってるかもしれませんが、至ってまともな人間なんです。10年も旅を続けているから、それなりにはおかしいかもしれませんが……。
――だいぶおかしいと思います!
佐藤 旅人も、あのレベルまで行くと、もはや比べようがないんです。アラスカとスラム、どちらがすごいかなんて、わかりません。そもそも、僕もそうなんですが、あの番組に出ている人たちは、ほかの人が何をしているかにあまり興味がない。ただ、自分がやりたくてやっているだけなんです。緻密でわけわかんないことやっているっていうのが、唯一の共通点ですかね。
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