広末涼子と内田有紀、90年代の“ショートカット・ヒロイン”はどう変化した? 共演作『ナオミとカナコ』から考察
#リアルサウンド
もちろんこれは、内田が旦那にDVを受ける主婦で、広末の役割がそんな彼女を助ける強い女性という、役割の違いから出た演技の違いとも言えるだろう。しかし、広末が演じる直美も、かつては自分の父親が母親を虐待していたという暗い過去を抱えているのだが、『聖女』(NHK)で業の深い悪女を見事に演じた広末ですら、立っているだけで全身から不幸な空気を醸し出している内田と並ぶと、演技が平坦に見える。仮に二人の演じる役柄が逆で、内田が直美を演じたとしても、絶対に拭い去れない暗い影が宿っていたのではないかと思う。
それにしても、本来は性的イメージが希薄で、健康なキャラクターの象徴であるはずのショートカット・ヒロインは、なぜ不幸なイメージを引き寄せてしまうのだろうか。かつては、少女マンガやJ-POPでも、ロングヘアーの女性が失恋して髪を切ることで、身軽で明るい女性に変身するという物語がよく描かれており、長い髪は自意識の重苦しさの象徴として扱われていた。しかし最近は、DAIGOと婚約会見を開いた北川景子のように、ロングヘアーの女性の方がサバサバとしている。もしかしたら、ロングヘアーが女らしく、ショートヘアが中性的という構造自体が崩れてきているのかもしれない。
今後は二人が犯した犯罪を追う存在として、もう一人のショートカット・ヒロインである吉田羊が演じる達郎の姉・陽子の存在がフィーチャーされることとなるのだが、「ショートカット・ヒロインの抱える女の業」という裏コードも、『ナオミとカナコ』のもう一つの見どころとなりそうだ。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
◼︎ドラマ情報
『ナオミとカナコ』(フジテレビ)
毎週木曜 22:00〜放送中
出演者:広末涼子、内田有紀、吉田羊、宮川一朗太、山路和弘、犬飼貴丈、富司純子、高畑淳子、佐藤隆太
原作:奥田英朗「ナオミとカナコ」(幻冬舎刊)
脚本:浜田秀哉
音楽:ガブリエル・ロベルト
プロデュース:長部聡介、大木綾子
演出:金井紘、葉山浩樹、品田俊介
制作:フジテレビドラマ制作センター
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/naomi-kanako/index.html
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