2つの冤罪事件の命運を分けたのは何だったのか? 司法が犯した重大犯罪を暴く『ふたりの死刑囚』
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再審の扉が開いた袴田と獄中死を遂げた奥西。2人の命運を分けたものは一体何だったのだろうか。
鎌田「長年にわたって死刑の恐怖と闘った一方、袴田さんは姉、奥西さんは母親と妹という肉親が無罪を信じて、ずっと支え続けてきたことでも2人の境遇は共通するものがあります。袴田さんの場合は検察が証拠として出してきた血痕付きの衣類を最新科学でDNA鑑定することが大きな決め手となり、また裁判所内の上下関係に左右されない英明な裁判官がタイミングよく再審を手掛けたことも大きかったと思います。奥西さんの場合はそもそも有力な証拠がないことから一審は無罪だったわけで、それなのに新たな証拠を見つけないと再審は始まらないという厳しい状況です。冤罪を問われる可能性は誰にでもあり、決して他人事ではない問題なんです」
無実の罪ながら自白を強要された挙げ句に国家から死刑を宣告され、いつ処刑されるか分からないまま独房に押し込められた―これ以上の不条理な恐怖と悲劇はないだろう。鎌田ディレクターは奥西死刑囚が49年ぶりに刑務所から出る様子を追う。冷たいムクロとなった奥西は、妹の美代子さんに見守られながら、最愛の母・タツノさんが眠る墓へと向かう。ようやく、家族が一緒になった瞬間だ。この世でもっとも恐ろしい生涯を送った奥西だが、この世でもっとも深く家族から愛された男であることを我々は知ることになる。
(文=長野辰次)
『ふたりの死刑囚』
ナレーション/仲代達矢 プロデューサー/齋藤潤一 監督/鎌田麗香 音楽/本多俊之 監修/門脇康郎 制作・著作・配給/東海テレビ 配給協力/東風 1月16日(土)よりポレポレ東中野ほか全国公開
(c)東海テレビ放送
http://www.futarinoshikeisyu.jp
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