世間の常識よ、直下型ブレーンバスターをくらえ!! 障害者プロレス四半世紀の激闘を刻む『DOGLEGS』
#映画 #パンドラ映画館
ヒース「小人プロレスや障害を持ったレスラーは海外にも存在します。でも『ドッグレッグス』のように過激で多様性に富んだ団体は他には聞いたことがありません。日本の文化はよくガラパゴス文化と形容されますが、そんなガラパゴス文化の中でも『ドッグレッグス』という団体はこの25年間で世界でも類を見ないような特別な存在に進化を遂げたように感じます。過去の映像資料もすべて見せてもらい、中にはラマンとプチラマンとの試合もありました。当時のプチラマンはまだ6歳で、リング上で動けずに横たわっている父親を一方的に蹴り続け、ラマンはそれにずっと耐えているんです。『ドッグレッグス』のリングはお互いの身と心がひとつになれるコミュニケーションの場でもあるのですが、この試合はあまりに過激すぎたので今回の映画で紹介するのは見送りました。単に刺激的なドキュメンタリーではなく、観た人にいろんなことを感じてもらえる作品にしたかったんです。海外では『障害者を見世物にしている』と受け止める人もいましたが、多くの人たちは自らリングに上がるレスラーに魅了されていました」
いよいよ「ドッグレッグス」の旗揚げ20周年記念大会が始まる。様々な障害を抱えたレスラーたちの溜め込んだ感情がリング上で吐き出される。そしてメーンイベントは、サンボ慎太郎とアンチテーゼ北島との20年戦争の最終決着戦だ。一体どちらが「ドッグレッグス」から引退するのか? 映画を観ながら、このリングは現実社会を凝縮した箱庭ワールドであることに気づかされる。現実社会と同様にリングでも容易に勝利を手にすることはできない。何度ボコボコにされても、それでも立ち上がっていく気概がなくてはリングでも現実社会でも生き残ることはできないのだ。また、強さだけを追求してもダメだ。対戦相手に敬意を払い、信頼関係が築かれていないと試合として成立しない。だから、全力で勝ちにくる慎太郎を北島は全力で潰しに掛かる。勝ったほうが障害者プロレスから引退することになる。でも、引退=障害者レスラーからの卒業ではない。リングという箱庭を出ていけば、さらに苛酷で多くの偏見に満ちた現実社会という広いリングが待っている。障害者レスラーたちの闘いはまだまだ終わらない。
(文=長野辰次)
『DOGLEGS』
監督・撮影・編集/ヒース・カズンズ 出演/サンボ慎太郎、アンチテーゼ北島、愛人(ラマン)、ミセス愛人(ミセスラマン)、中嶋有木
日本配給/トリウッド、ポレポレ東中野 1月9日(土)より下北沢トリウッド&ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
http://doglegsmovie.com/ja
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