「ガウディ計画編」は再生を描いた──『下町ロケット』が掲げた“TBS品質”の矜持
#テレビ #ドラマ #下町ロケット #スナオなドラマ考
放送開始前から大きな期待を集めていたドラマ『下町ロケット』(TBS系)だが、12月20日に放送された最終回の視聴率は全10話の中で最も高い22.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。作品の内容も回を追うごとに密度を増し、多くの視聴者を満足させた。ここでは、第6話から第10話までの「ガウディ計画編」を振り返ってみたい。
ドラマ『下町ロケット』は、第1話から第5話までは池井戸潤の小説『下町ロケット』を、第6話から第10話までは同『下町ロケット2 ガウディ計画』を原作としている。全10話のドラマ作品で2冊の小説を原作としているというのも珍しいが、それゆえに毎回密度の濃い内容となった。原作のテーマを換骨奪胎し、絶妙の形で見せていくやり方には、この作品をテレビドラマとして視聴者に届けたいという制作者のプライドを感じずにはいられない。佃製作所が「ロケット品質」を掲げるのなら、この作品は「TBS品質」を掲げたテレビドラマだといえるだろう。
原作との違い、というか、原作の表現するものをテレビドラマとしてふさわしい見せ方に変えている部分はいくつもあるが、「ガウディ計画編」の初回となる第6話でも見事な脚色が加えられている。それは、佃航平(阿部寛)や佃製作所の開発者たちが、福井市にある株式会社サクラダを訪れる場面でも象徴的だ。
人工弁「ガウディ」を開発しようとしている株式会社サクラダの社長、桜田章(石倉三郎)は、自身が「ガウディ」に専心している理由を明かす。彼には娘がいたのだが、17歳のときに重い心臓弁膜症で亡くなっていたのだ。それを聞いた航平と佃製作所の社員は心を打たれるのだが、この場面は、原作ではこう描かれている。
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「仕事ってのは、いろいろですね」
やがて、その口から出てきたのはそんな言葉だ。
「桜田さんとウチとでは、仕事をする理由がまるで違う。人の数だけ、仕事をする意味があるのかな」
「そうかもな」
佃はいった。
「だからこそ、おもしろいんじゃないか。———なあ、やってみないか」
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