静脈注射によるトリップ演技があまりにヤバい! 乞食美少女の純愛ドラマ『神様なんかくそくらえ』
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クリスマスケーキも神の祝福もいらない。家族や家がなくてもヘッチャラ。『神様なんかくそくらえ』(原題:HEAVEN KNOWS WHAT)のヒロインを演じたアニエル・ホームズは、タフでワイルドな女の子だ。住所不定の彼女はNYのストリートで生きてきた。職業は物乞い。街ゆく人たちに「小銭をちょうだい」とおねだりし、後は廃品や盗品をうまく活用してサバイブしてきた。顔立ちは整っているが、指先はひどく汚い。世間の常識や法律に縛られない、野生動物のような危うい魅力の持ち主だ。そんな彼女の傷だらけの恋愛青春ストーリーが本作では描かれる。少女コミック原作の毒気のない実写映画で賑わう日本映画とはまるで毛色が違う。
『神様なんかくそくらえ』はアリエル・ホームズの実体験をもとにした、ホームレスたちのリアルな物語だ。家がなくてもお金がなくても全然ヘーキなハーリー(アリエル・ホームズ)だったが、彼女の心を支えている大きな存在がある。それはホームレス仲間のイリヤ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)。イリヤは美形でミステリアスでいつもクールで、ハーリーは彼に夢中だった。彼のことが好きすぎて、「俺のことがそんなに好きなら、この場で死んでみろ」と言われ、「いいわよ」とリストカットしてみせる。ハーリーの細い手首からドクドクと赤い血が流れ出す。この赤くて熱い血はハーリーが生きている証拠であり、死んでもイリヤのことを愛し続けるという誓いのサインでもあった。驚いたイリヤに「お前の頭はどーかしてる!」となじられながら、ハーリーは病院に担ぎ込まれる。歪んだ愛だが、そんなおかしな方法でしか愛する人への想いを伝えることができない。ハーリーは重度の“ロマンス依存症”だった。
精神病院に収容されたハーリーだが、病棟内でトラブルを起こし、すぐに追い出される。退院したハーリーは周りのホームレスたちの助言に従い、しばらくイリヤと距離を置くことに。ドラッグディーラーのマイク(バディ・デュレス)と一緒に暮らし始めるが、今度はロマンス依存症の代わりにドラッグ依存症に陥る。トロ~ンとした顔つきで「今日の食事代、ヘルプ」と書かれた手書きのポップを路上に置いて佇む。そんな彼女の前に、イリヤが再び現われる。ハーリーをめぐって、マイクとイリヤは公園で激突。イリヤはカッターナイフの刃を組み合わせたオリジナルな手裏剣を持ち出し、公園が血みどろの修羅場と化す。自分のせいで男たちがケンカしているのが、ハーリーは実はうれしかったりする。傷を負ったマイクの手当をしながらも、心の中はイリヤのことでいっぱいだった。夜、マクドナルドの便所でイリヤが倒れたことを知ったハーリーは、もうじっとしていられない。薬物の過剰摂取で意識を失ったイリヤのもとへと駆け出していく。泡を吹いて倒れているイリヤに、ハーリーは懸命に人工呼吸を試みる。
こんなイカれた青春ドラマを撮ったのは、NYのインディーズシーンで活躍する兄弟監督のジョシュア&ベニー・サフディ。NYのストリートカルチャーをリサーチしていた際、路上でアリエル・ホームズとばったり出会った。当時19歳だったアリエルの体験談にサフディ兄弟は心を奪われ、映画化することを思い立つ。ヒロインにはアリエル、マイク役には実際にドラッグディーラーをしていたバディ・デュレスと、ストリートで暮らす若者たちをそのまま起用した。物語の重要な鍵となるイリヤ役だけ、プロの俳優をキャスティングした。『X-MEN ファースト・ジェネレーション』(11)や『アンチヴァイラル』(12)に出演した若手俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズがこの役を受けてくれた。ケイレブは撮影前からストリートで暮らす人々のコミュニティーで過ごし、夜はホテルではなくネットカフェで寝泊まりした。そんなアウトローたちによる、ぶっ飛んだ映画として『神様なんかくそくらえ』は誕生した。来日したジョシュア監督に製作内情を聞いた。
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