「臆病なくらいがちょうどいい」『コウノドリ』に漂う“強さ”の正体
#ドラマ #テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
“優しい”ドラマである。
今期、視聴後の満足度が抜群に高かったのが『コウノドリ』(TBS系)だ。毎回毎回、強く心に響き、涙を禁じ得ない。いよいよ18日、最終回を迎える。まだ終わってほしくないと思わずにはいられないドラマだ。
『コウノドリ』は、鈴ノ木ユウによる同名のマンガを原作に、『八重の桜』『ゲゲゲの女房』(ともにNHK)などの山本むつみが脚本を手掛けた作品。
舞台は産婦人科だ。主人公・鴻鳥サクラを演じているのは綾野剛。愛情深く、常にほほえみを浮かべ、患者に優しく語りかける産婦人科医である。また、謎の天才ピアニスト「BABY」という顔も持っている。
一方、サクラの同期・四宮ハルキ役には星野源が起用されている。彼は、サクラとは対照的に、常に無表情。患者に対しても必要最小限なことしか言わず、冷淡だ。それゆえ、時に患者を傷つけてしまうこともある。
これまで2人が演じてきた役柄を考えると、それぞれのキャラクターは普通、「逆」である。綾野はクールな役柄を演じることが多いし、星野も優しいイメージが強い。だが、あえて反転させることで、この作品を豊かなものにしている。
ドラマ『コウノドリ』において、この「逆」というのは、キャスティングに限った話ではない。もちろん、四宮の冷淡さは、優しさの裏返しだし、サクラは誰よりも厳しい目を持っている。また冒頭で“優しい”ドラマだと書いたが、各エピソードのストーリー自体は、その「逆」であることがほとんどだ。とても“厳しい”現実を描いている。
不妊治療や高齢出産、胎盤早期剥離など、産婦人科が抱えるさまざまな困難を描いているが、『コウノドリ』では、“奇跡”はほとんど起きない。たとえば、第9話では、23週で切迫早産になった妊婦・明子(酒井美紀)が救急搬送される。医師たちの懸命な処置で、赤ちゃんは無事誕生した。だが、明子も夫の大介(吉沢悠)も、生まれてきた赤ちゃんを見て愕然とする。それはあまりに小さく、たくさんの管がつながれていたのだ。
さらに、新生児科医の新井(山口紗弥加)から、両親に厳しい現実が伝えられる。早く生まれたために肺の形成が十分ではなく、呼吸や循環が不安定なために、脳がうっ血や虚血を起こしやすいこと。脳室内の出血が起こってしまえば予後不良、つまり重篤な障害が残ったり、命に関わることがあること、だ。「どうしよう」と泣きだす明子に「大丈夫、心配ないよ」と震える声で励ます夫は、引きつった顔で新井に尋ねる。
「でも先生、障害が残るとか、亡くなるとか……そういう可能性は低いんですよね?」
「低くは……ないです」
伝えられる厳しい現実に耐え切れず、大介は激高する。
「じゃあ、なんで助けたんですか!」
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