世界一のプレイボーイが“ヤリチン”から卒業か!? 男が生き方を改めるとき『007 スペクター』
#映画 #パンドラ映画館
6代目ボンドの何とストイックなことか。初代ボンドことショーン・コネリーは『ゴールドフィンガー』ではレズビアンである悪女プッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)を濃厚キスで改心させた(今だったらLGBT関係の団体から訴えられるよ)。日本ロケ作品『007は二度死ぬ』(67)では海女である浜美枝と偽装結婚するというダークな一面も見せている。3代目ボンドのロジャー・ムーアは『ムーンレイカー』(79)で無重力ファックしている様子を衛星生中継され、『美しき獲物たち』(85)では筋肉女グレイス・ジョーンズとベッドを共にした。かつてのボンドたちのお盛んぶりに比べると、亡くなった女性を想い続ける現在のボンド像は隔世の感がある。
本作には2人のボンドガールが登場する。年季の入ったファンのために、美熟女モニカ・ベルッチを用意。しかも夫を亡くしたばかりの喪服が似合う後家さんというマニア好みの設定にしてある。ボンドは自分が殺した男の未亡人と危険な関係を持ち、首尾よく犯罪組織の情報を手に入れる。モニカ・ベルッチはボンドに利用される旧来のボンドガール的役回りだ。もうひとりはボンドと対等なパートナーシップを結ぶことになる新しいボンドガール像のレア・セドゥ。『アデル、ブルーは熱い色』(13)で大胆ヌードを披露したレア・セドゥは、我が道を突き進むジェンダーフリーなキャラがよく似合う。そんな彼女が演じるマドレーヌは、ボンドと生死を共にすることで激しい恋愛感情が燃え上がる。自分の意志を持つマドレーヌと出会い、親密な関係になることで、組織の一員であるボンドはそれまでの自分の生き方を問い直すことになる。任務のためとはいえ数多くの女性たちと夜を共にしてきたセックスライフも、死んだ女性に捕らわれ続けるネガティブな思考性もリセットすることを考え始める。かつては男が憧れる“理想の男性”だったボンドが、女性にとっても好ましい“理想の大人”へと成熟していく。
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