“中流階級のガラパゴス芸人”タイムマシーン3号「尖ってるやつには勝てないと、やっと気づいたんです」
#お笑い #インタビュー #M-1
■「客にウケても、審査員にウケない」
山本 ご存じの通り、僕らって、わかりやすいネタが多いんですよ。キャラクター重視だったり、内容も万人にウケる形の。一方で、審査員ウケというか、玄人ウケがあまりないコンビだったりするんですよ。
――そうなんですか?
山本 M-1の都市伝説として、「ウケた上位8組じゃない」っていうのがありまして。8種類の漫才が決勝に行くと。
――ほかのコンビと、かぶらないということですね。
山本 ウケたけど、ベタな3組からは1組だけ、シュール1組、キャラ1組……みたいな。もちろん都市伝説ですよ。
――まぁ、番組ですから。
関 長年(決勝まで)行けなかったのもあって、いろいろ考えちゃうんですよ。
山本 そうなってくると、僕らはウケ枠、お客さん盛り上がり枠ではあると思うんですけど、もっとウケる人が毎年出てきてて、その枠で一番取るのは難しかった。僕らは手数打ってわかりやすくベタな感じで……という漫才だったので。それが10年及ばなかった理由ですね。
関 正直、その間も迷っていたんですよ。デブだけを押していいのか。ボケツッコミを変えたこともありますし。
山本 05年に出たときは、あまり振るわない結果だったんですけど、審査員の渡辺正行さんから「デブネタ1本じゃ、なかなかキツいね」って言われて、僕らがそれまでやってきた翼をもがれました。どうしよう……と地べたでいろんなこと探したんですけど、それこそ、しゃべくりにしてみたりコントやってみたり、両方ボケもやってみましたし。でも結局、時代を追いかけるような漫才しかしてなくて、やっぱりガーンと行く人はやりたいことをやっていて、それに時代が追いついてくるっていう感じなんです。でも僕らは、ずっと先端をちょっと後ろで追いかけていただけだった。
――なるほど。
山本 言ってみれば、あの05年の決勝で、当時の東京芸人の夢が断たれたんです。東京のベタな漫才がM-1ではダメだと。僕らだけではなく、東京芸人みんなの漫才への向き合い方が変わってしまった。オンリーワンを目指すようになり、ハマカーン、オードリーと、自分たちにしかできないものを見つけ出したコンビが抜けていきました。
関 僕らは、それを見つけられなかったっていう話なんですけど。
山本 でも、またここでベタでもいけるってなると、面白いですよね。俺らもう、コンテスト関係は全部ダメだろうと思ってたから。
――それは、どこかで吹っ切ったんですか?
山本 原点回帰じゃないけど、「尖ってるやつには勝てないや」という大事なことに気づきました(笑)。だって、我々2人はおかしくないんですもん。中流階級に育ちましたし、典型的な核家族でしたし。
関 軽自動車もありました。
山本 そうなんですよ。
関 犬もいたなぁ。
山本 でも、ぶっ飛んだ母親なんていなかった!
関 そんな2人が、おかしなことをしなきゃいけないわけですから。
山本 じゃあこれ、もう無理だと。尖った笑いは。ウケる人だけにウケればいいっていう笑いじゃなくて、みんな笑ってほしいなっていう考えに変わりまして。それって結局、もともとやってたことと変わらなかったんですけど。
――また同じところに戻ってきたわけですね。
山本 そのタイミングと、M-1の傾向と対策がたまたま合致したのが今回だったのかなっていう。我々「皆既日食」って呼んでますけど。
関 どんな漫才がいいのかとか迷っているうちは、ダメなんでしょうね。今年はもう、腹積もりはしっかりしてたんで。
――自分たちがいいと思うことをやろうと。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事