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行きたくても行けない!? “本邦初”日本の秘島ガイドブック『秘島図鑑』

51lAnfUZGpL.jpg『秘島図鑑』(河出書房新社)

 島はいい。なんといっても、空気がゆるい。伊豆大島(東京都)や初島(静岡県)のように、首都圏から2時間かからずに行ける島であっても、足を踏み入れた途端、不思議なほどのんびりとした空気や時間が流れる。


 そんな魅力的な有人の島を紹介するガイドブックはこれまで何冊もあったが、『秘島図鑑』(河出書房新社)は、本邦初の“行けない島”のガイドブックだ。日本全国に約7,000もあるという島々の中から、興味深い歴史や文化をひもとき、中でも特別感のある“秘島”を絞り、紹介している。登場する島は、全部で33島。女人禁制の伝統を持つ神聖な島として崇められる沖ノ島(福岡県)、太平洋戦争で激闘が繰り広げられた硫黄島(東京都)、北方四島・竹島・尖閣諸島といった領土問題に揺れる島から、アホウドリの生息地としても有名な鳥島(東京都)、トカラ列島のさらに先にある横島(鹿児島県)、フランスの軍艦バイヨネースが発見したベヨネース列岩(東京都)など、ほとんど耳にしたことがない島まで、幅広い。

 本書はこれらの島について、例えば沖縄県東部にある沖大東島(ラサ島)であれば、「1543年、スペイン人(B・デ・ラ・トーレ)が島を発見。1807年、フランス軍艦カノリエル号により、「ラサ島」と命名。1900年、日本領に編入。11年にラサ島燐砿合資会社(34年ラサ工業に改称)が設立され、リン鉱石の採取・搬出が始まる。37年、日本政府よりラサ工業に沖大東島が譲渡され、正式にラサ工業の私有地となる。45年、太平洋戦争の激化で、従業員やその家族ら民間人が引き揚げる。58年、在日米海軍が島全体を射撃場として使用開始」などと、見開きの島の写真に基本情報が添えられ、ヒジョーに興味をそそる。これに加え、熾烈を極めた資源採取や島の開拓、男性しか暮らすことができなかった時代、現在の島の様子などが続き、これは本当に日本の話ですか? なんてツッコミたくなるほど、驚きの情報が詰まっている。

 また、島紹介とは別に、50ページほどにわたる、行けない島を身近に感じるための「実践編」の章も興味深い。「秘島の“最寄”有人島まで行ってみる」「浜辺の漂着物をチェックする」「マイナー航路に乗って絶海を感じる」など、具体的な提案がされているのだが、中でも気になったのが「本籍を島に移してみる」というもの。都会で暮らしつつ、どんな島に本籍を置くことができるのかなどが詳細に記されており、ちょっとやってみたくなる。

 本書を読んでいると、日本の島にはずいぶんいろいろな歴史があって、自分は全然知らないんだな、ということを痛感させられる。行ってみたいけれど、アクセスの方法もないし、行けない――。そんな近くて遠い日本の秘島へ、思いを馳せてみてはどうだろうか?
(文=上浦未来)

●しみず・ひろし
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ局勤務を経て、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、同大学院新領域創成科学研究科博士課程中退。現在、編集者・ライター。『海に癒される。 働く大人のための「海時間」のススメ』(水中クラブOB高橋啓介と共著、草思社)など。

最終更新:2015/11/29 18:00
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