殺処分寸前の犬たちが人間に復讐する!! ハンガリー映画に込められた社会的弱者たちの叫び
#映画
犬と人間との関係を描いた映画がこの秋、次々と劇場公開されている。キアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』は家族同様にかわいがっていたビーグル犬を殺された元殺し屋が復讐に燃えるアクションノワールとして人気を呼び、トルコ原産の大型犬カンガールドッグと孤独な少年との交流を描いたトルコ映画『シーヴァス 王子さまになれなかった少年と負け犬だった闘犬の物語』はロングラン上映中だ。12月から公開される3Dアニメ『I LOVE スヌーピー』では、“永遠のダメ少年”チャーリー・ブラウンが憧れの女の子の気を惹こうと愛犬スヌーピーに見守られながら学芸会の特訓に励む。どの作品も人間と犬との掛け替えのないパートナーシップが描かれている。そんな中で極めつけの犬映画といえるのが、11月21日(土)より公開されるハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。施設に収容されていた犬たちが一斉蜂起し、虐待した人間たちに襲い掛かるという異色の動物パニックムービーなのだ。
2014年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門グランプリ&パルムドッグ賞を受賞した本作の舞台となっているのは、純血種の犬だけ残し、雑種の犬には重い税を課して、飼い主が払えない場合は殺処分が待っているという悪法が定められたある国。思春期を迎えた少女リリ(ジョーフィア・プショッタ)は両親の離婚に胸を痛めていたが、リリのことを慕う飼い犬のハーゲンだけが心の拠り所だった。ところが犬嫌いな父親ダニエル(シャーンドル・ジョーテール)は雑種犬に課せられた税金を払うことを拒み、ハーゲンを自宅から離れた高架下に棄ててしまう。愛するリリのもとに帰ろうとするハーゲンだが、途中で野犬ブローカーに捕まり、闇ドッグトレーナーの手で闘犬として調教されるはめに。やがて収容施設送りとなったハーゲンは、狭い檻に押し込められていた犬たちを率いて人間への逆襲に転じる。ハーゲンら総勢250匹の犬たちがブタペストの市街地を集団疾走するクライマックスは、CGなしの大スペクタクルシーンとなっている。
日本で配給収入54億円の大ヒットを記録した『子猫物語』(86)は撮影中に動物虐待を伴う過剰演出が行なわれていたことで悪評を極めたが、動物愛護意識の強い欧州のハンガリーで製作された『ホワイト・ゴッド』だけに出演犬は充分にケアされての撮影となった。闘犬シーンがあるが、1カ月以上のトレーニングを経た犬同士が楽しく取っ組み合う様子を撮ったものだという。また、出演した250匹の犬たちの多くはハンガリーで保護施設にいた野犬が起用されているというのも驚きだ。犬たちは映画に出演したことで話題となり、施設に戻されることなく、新しい里親たちに引き取られていったという美談が残されている。脚本を手掛け、劇中で野犬ブローカー役も演じたコーネル・ムンドルッツォ監督に製作内情について語ってもらった。
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