思わずセミやゴキブリも食べずにはいられなくなる! 意外と真面目でシビアな「昆虫食の世界」
#本 #インタビュー
どうすればより昆虫をおいしく食べられるか。味や食感、栄養をあらゆる角度から研究し、バッタ会、セミ会、若虫会など昆虫料理イベントを主催する内山昭一さんの本、『食の常識革命! 昆虫を食べてわかったこと』が刊行された。
本書の内容は、「おいしい昆虫ベスト10」「昆虫食あるある」「虫食い女子が昆虫食の魅力を語る」など、エンターテインメントに満ちているが、それだけではない。著者の内山さんは「都会に暮らす人たちは食料を自力で生み出す術を知りません。食料危機という非常時は、動物性タンパク質をどう摂るかを考える必要に迫られます。このとき検討される食材に昆虫が入るかどうかはとても重要です」という。
現代日本の食料問題に警鐘を鳴らす著者に、本書の狙いを聞いた。
■FAOが食料問題を解決する手段として高く評価した昆虫食
──内山さんはこれまで、昆虫食レシピ本、昆虫食の研究書などを上梓されていますが、『食の常識革命! 昆虫を食べてわかったこと』は、それらと比べると異彩を放っています。
内山 昆虫食には「捕る楽しみ」「料理する楽しみ」「食べる楽しみ」の三拍子が揃っています。その魅力を伝えたくて、これまで本を出してきましたが、昆虫食に興味がある人でないと手に取りにくかったかもしれません。しかし、2013年の5月13日以降、昆虫食が世に広まると確信したので、昆虫食と聞いて及び腰になる人にも、まずはその世界を覗いてみようと思ってもらえる本を出したいと考えていました。
──2013年5月13日になにがあったのですか。
内山 その日、国連食糧農業機関(以下、FAO)が、今後予想される人口増加と地球温暖化にともなう食料問題を解決する手段として、昆虫食を高く評価する報告書を出したのです。そして、報告書が出た翌日の夕方、NHKの『ニュースウオッチ9』から取材があり、その夜の番組に放送されました。この出来事で、昆虫食の存在が世に広まると確信しました。実際、2013年5月13日以降、メディアからたくさん取材されるようになり、「昆虫は地球を救う」というタイトルとともに紹介されるようになりました。
──たしかに本書には、昆虫料理研究家とは何者なのか、興味を喚起する話がたくさん出てきます。カラー写真で内山さんの虫部屋も掲載されていますね。
内山 本書で初めて公開する自宅2階の虫部屋には、定住している虫や四季折々やってくる虫などでいつもあふれかえっています。たとえば、虫の標本、食材を入れる冷凍庫、カイコ、ゴキブリ、カメムシなどが入った飼育ケース、天井から吊り下げている乾燥地蜂がぎっしり詰まったネット、スズメバチ成虫を漬けた焼酎。第1章では、昆虫料理研究家がどんな生活と研究をしているかだけでなく、家族に私の活動をどうやって理解してもらっているかも包み隠さず書きました(笑)。
■まずい虫はごくわずか。おいしい虫は探せばもっといる
──虫部屋にいる虫は、ご自身で食べるために飼育しているのですか?
内山 はい。ですが、それだけではありません。FAOの報告書が発表されて以来、昆虫食イベントの回数が増え、メディアからの取材依頼も増えています。そうした際には当然ながら数点の昆虫料理を提供することになりますが、この要望に応えるため一定量の食材を常に用意しておかなければなりません。そのためにも飼育しています。普通に店で手に入る食材ではありませんから。
──ゴキブリも飼育しているんですね。
内山 だいぶ以前のことですが、冬に雑誌「漫画実話ナックルズ」(ミリオン出版)からゴキブリ特集を組みたいという依頼がありました。「この季節に捕まえるのは難しいですよ」と答えると、「では、こちらで用意します」という返答でした。そして取材の当日、なんと連れてきたマダガスカルゴキブリが百匹あまり! 私もさすがに茫然自失。とりあえず取材に参加した仲間数人で食べきれそうな五十匹を調理し、残った五十匹を持ち帰り飼育することにしました。それが、いま虫部屋に同居しているマダガスカルゴキブリたちの先祖です。
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