ロッチの『KOC』1本目はなぜ、あれだけウケたのか 日テレ『世界の果てまでイッテQ』(10月25日放送)を徹底検証!
#お笑い #ロッチ #タレント解体新書
上島や出川が成し遂げた「リアクション芸」はあくまでも芸であり、そこには努力と技術の蓄積がある。そこには「リアクション道」ともいえるストイックささえあるが、中岡にはそれがない。一切の気負いがなく、いつだって自然体だ。だからこそ、できないし、本人やスタッフが想像していなかった面白さが逆に生まれている。
『キングオブコント』の1本目は、そういった中岡の魅力が詰まったコントだった。『イッテQ』などの番組を通じてお茶の間が知っている、あるいはお茶の間が期待する中岡創一の姿がそこにあった。『キングオブコント』は今年から審査方法が変わり、客席も芸人ではなく一般視聴者ばかりになったというのも強く影響していると思うが、だからこそ1本目はあれだけウケた。言ってしまえば、ウケすぎてしまった。
ロッチの2本目はロッチらしいコントで、完成度も高い。だが1本目があまりにもウケすぎたことによって、観客は1本目のような、中岡(あるいは、コカド)の素の面白さが見えるようなコントを期待してしまったのだろう。もちろん、これらはすべて結果論だ。終わってからなら、なんだって言うことができる。それを事前に予想するのが不可能に近いから、『キングオブコント』は難しいのだ。
『キングオブコント』で、ロッチはつかみかけた優勝を逃してしまった。だが逆にいえば、2本目のような完成度の高いロッチらしいコントとは別に、1本目のような中岡の素の面白さが見える方向性のコントを手に入れた、ともいえるだろう。これで終わりではない。ロッチのコントがこの経験によってますます幅を広げ、そして誰も見たことのない境地に達することを、心から願ってやまない。
【検証結果】
本文でもつづったように、中岡は基本的にできない。そしてそのできなさが、笑いになっている。これは『キングオブコント』で中岡が演じたお客に対してもそうだが、できなくても笑いになる、ということ自体が救いにつながっている。それは誰も傷つけることのない、ロッチの笑いの本質でもある。できなくても笑いになるというのは、芸人に限った話ではなく、我々視聴者にとっても救いだ。できなくても笑える。負けても笑える。だから、お笑いは、素晴らしい。
(文=相沢直)
●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa
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