ヒトラーは予知能力者か、それとも共同幻想か? 『ヒトラー暗殺』ほかナチスものが集中公開!!
#映画 #パンドラ映画館
すでに公開中の『顔のないヒトラーたち』にも注目したい。時間は流れ、戦争が終わり、経済復興に沸く1958年の西ドイツ。若い判事ヨハン(アレクサンダー・フェーリング)が勤める検察庁にひとりの新聞記者が現われ、アウシュヴィッツ強制収容所にいたナチス親衛隊(SS)が教師をしていることを伝える。興味を持ったヨハンが調べてみると、その教師だけでなく、多くの元ナチ党員が罪に問われることなく平穏に暮らしている事実を知る。終戦からまだ十数年しか経っていないのに、ほとんどの市民は強制収容所で大虐殺があったことを「知らない」と答えていた。
検察庁の同僚たちは「薮を突いて蛇が出てくることになるぞ」と忠告するが、正義感に駆られたヨハンは気が遠くなるような膨大な資料を調べ始める。捜査が難航する中、政府関係者にもナチ党員がいること、強制収容所で人体実験を繰り返していた医師ヨーゼフ・メンゲレ(『ムカデ人間』のハイター博士のモデル)も存命し、しかも逃亡先の南米と西ドイツを自由に行き来していることを突き止める。ヒトラーの死=ナチスの全滅ではなかったのだ。ヨハンは激しい返り血を浴びながらも、自国の暗部にメスを入れていく。
ヒトラーにまつわるこれらの作品を見て感じるのは、ヒトラーとは異界からやってきた醜い悪魔ではなく、閉塞感が漂う社会に風穴を開けてくれる強い指導者の出現を待ち望んでいた人々にとっての理想の人物像だったということだ。いわば、ヒトラーは当時のドイツ市民の共同幻想が生み出した産物だった。人々が願い続ける限り、第2、第3のヒトラーが現われるに違いない。
(文=長野辰次)
『ヒトラー暗殺、13分の誤算』
監督/オリヴァー・ヒルシュビーゲル 脚本/フレート・ブライナースドーファー、レオニー=クレア・ブライナースドーファー 出演/クリスティアン・フリーデル、カタリーナ・シュットラー、ブルクハルト・クラウスナー
配給/ギャガ 10月16日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネマライズほか全国順次公開
(c)Bernd Schuller
http://13minutes.gaga.ne.jp
『ミケランジェロ・プロジェクト』
製作・脚本・監督/ジョージ・クルーニー 出演/ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダン、ボブ・バラバン、ヒュー・ボネヴィル、ケイト・ブランシェット 配給/プレシディオ 11月6日(金)より全国ロードショー
(c)2014 Twentieth Century Fox Film Corporraition,All Rights Reserved.
http://www.miche-project.com
『顔のないヒトラーたち』
監督・脚本/ジュリオ・リッチャレッリ 脚本/エリザベト・バルテル 出演/アレクサンダー・フェーリング、フリーデリーケ・ベヒト、アンドレ・シマンスキ、ゲルト・フォス 配給/アットエンタテインメント PG12 10月3日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
(c)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG
http://kaononai.com
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事