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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 泉ピン子の恐るべしロケテクニック
週刊!タレント解体新書 第34回

泉ピン子の恐るべしロケテクニックとは テレ朝『世界の村で発見!こんなところに日本人』(10月9日放送)を徹底検証!

(5)最終的なオチはタレントがつける

 ロケのテーマが「日本人を探す」というものである以上、日本人を見つけたらそれがひとつのゴールではある。だが泉ピン子は、非常にシビアに、視聴者としての目線も持っている。旅の途中、千原ジュニアが「苦労して探して日本人を見つけると、本当に感動しますよ」と伝えたときの泉ピン子の冷静な一言にも、それが表れている。

「感動する? でも、向こうはそうでもないんだよね」

 この一言を受けて、千原ジュニアが過去に行ったロケのVTRが流れるのだが、実際に見つけられる日本人はそれほど感動しているわけではない。それはまあ、当たり前の話であり、見つける側がどれだけ苦労しようと、向こうにはそんなことは関係ない。だから「日本人を探す」という目的が達成されたからといって、それはあくまでも番組側の都合であり、少なくとも視聴者とってはそれがオチになるわけではない。

 だから泉ピン子は、自らの手でオチをつける。それは具体的には、泉ピン子がちょっといい感じのことを言う、という形で行われる。遠いコソボで暮らし、少し弱気なことを言う日本人に対して、泉ピン子はちょっといい感じのことを言うのだ。

「人間、ほとんど決めてないわよ。その通りにいかないのが人生よ。ケセラセラ。どうにかなるわよ」

 絶妙なまでに、ちょっといい感じだ。感動的になりすぎず、かといって、どうでもよすぎることもなく、ちょっといい感じの一言。泉ピン子がこのちょっといい感じのことを言うことによって、視聴者的なオチが生まれる。オチというか、安心感といってもいいだろう。これを作ることが出来るのは番組ではなくあくまでもタレントであり、泉ピン子は最後まで、抜群にすぐれたロケタレントなのであった。

 泉ピン子。1947年9月11日生まれの御年68歳。大御所であり大ベテランではあるが、彼女は決してその位置に安住しない。考えに考えた上で挑戦を重ねる、現役のタレントである。少なくとも『世界の村で発見!こんなところに日本人 2時間SP』の泉ピン子のロケには、あらゆるタレントが学ぶべき技術があふれていた。大御所である。大ベテランでもある。だが同時に、泉ピン子の精神は、若手芸人のそれでもあるのだ。

【検証結果】
 泉ピン子とのロケを終えた上で、千原ジュニアはこう語っている。「ピン子さんの根幹は芸人やねんな、とホンマに思いました。カメラが回っていないところでも、ずーっと面白い話をして、とにかくバッテリーを残さずに1日を終えるんです。そういうところは芸人としても見習わないといけないなとホンマに感じました」と。レジェンドは死なない。いつまでも現役で生き続けるからこそ、レジェンドは、レジェンドなのだ。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/10/15 16:25
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